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香川真司も驚く「トゥヘル革命」。
ELポルト戦完勝で見せた2つの奇策。
posted2016/02/19 12:00
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
REUTERS/AFLO
「フォーメーションなんて、電話番号みたいなもので。まるで意味がない」
バイエルンにやってきたばかりのころ、グアルディオラはメディアに向けてそう言い放った。フォーメーションをただの数字の羅列とするその喩えを借りるなら、トゥヘルの目指すサッカーはこんな風に表現できるだろうか。
トゥヘルは、頻繁に電話番号を変える監督だ。いや、電話番号は変えずにキャリア(コンセプト)だけを変えている。
今季からドルトムントの指揮をとるトゥヘルが、チームに植え付けた基本フォーメーションは4-3-3だ。だが年が明け、シーズン後半戦に入るとこれまでとは異なることに取り組んできた。同じ4-3-3でもコンセプトが大きく異なるものもあったし、昨シーズンまでのドルトムントに近い4-2-3-1もあれば、2月18日のポルト戦でいきなり採用した3-2-4-1も……。
ただペップが言うように、その数字をおいかけてもさして意味はない。本質に迫らなければならない。
ポルトとのELノックアウトステージ1回戦のファーストレグは、今季の1回戦のなかで最大の注目を集めるカードだった。このステージに参加しているクラブのなかで、UEFAクラブランキングが最も高いドルトムント(10位)と3番目に高いポルト(13位)の対戦だったからだ(ちなみに2番目に高いのは11位のシャルケ)。
ほぼ1年ぶりのサヒンを大舞台でいきなり抜擢。
そんな試合でトゥヘルは、あるサプライズを仕掛けた。
1つ目が、守備的なMFにサヒンを抜擢したことだ。彼が最後に公式戦に出場したのは昨年2月28日のシャルケとのダービーで、そこから負傷で長期の離脱を強いられていた。チームの練習に復帰はしていたものの、いつ試合に出られる状態になるかわからないと見られていた。しかし、トゥヘルはサヒンを、この大一番にいきなりスタメンで送り出したのだ。
「彼をこれ以上(練習だけに)とどめることなんて出来なかったんだ。最近、彼に『練習試合を組むよ』と伝えたら、彼はこう答えたんだ。『練習試合なんか必要ありませんよ。準備は出来ています』とね。だから、彼を信頼したんだ」
トゥヘルは涼しげに語ったが、サヒンの先発を予想するものなどいなかったはずだ。風邪でギュンドガンが欠場を余儀なくされたという事情もあったが、この試合でバイグルと組むダブルボランチとしては、今年一気に評価をあげているライトナーや、過去2試合でアンカーを務めていたギンターである方が自然だった。