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香川真司も驚く「トゥヘル革命」。
ELポルト戦完勝で見せた2つの奇策。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byREUTERS/AFLO
posted2016/02/19 12:00
ホームスタジアムの「ジグナル・イドゥナ・パルク」でポルトを迎えた監督のトゥヘル。リーグでは単独2位で首位のバイエルンを追う。
香川が語った、守備が機能していた理由。
もっともトゥヘルの策は、ドルトムントの選手だけでなくポルトをも驚かせることになった。序盤からポルトの両サイドの選手は守備で良いポジションをとれず、とりわけシュメルツァーのいる左サイドを起点に、サイドをえぐるシーンが何度もあった。
そして、その流れのなかからCKを手にすると、得意とするショートコーナーを使い、ムヒタリアンのボールを受けた香川が素早く戻した。ムヒタリアンのクロスからピシュチェクのゴールが前半6分に生まれたのも、ドルトムントにとっては大きかった。
スムーズな攻撃が出来たとは言えなかったが、守備は上手く機能していた。まずは失点をさけることを意識していた香川も、大きな手ごたえを感じた。
「1対1のところで3枚(フンメルス、ソクラティス、ピシュチェク)が個人の能力で絶対に勝ちきれたし、ファールを与えないように守備をしてくれました。あそこで相手に前を向かせない状況にして、ボランチであったりサイドハーフの選手らが囲んでいく。そういうプレスが、今日は徹底できていた。切り替えの早さも今日はあったと思うので、アグレッシブに守備が出来ていたんじゃないかなと思いますね」
実際、試合終盤に何度か攻め込まれたとはいえ、ポルトのシュートはわずか4本に終わった。
攻撃に関しても、後半に入ると相手の運動量が落ち、ドルトムントの選手たちが少しずつこの戦いに慣れてきたのが見ていてわかった。後半12分にサヒンに代わりライトナーが入ったことで、パスを散らすだけではなく、中盤の底から前線の選手たちと絡む動きも出始めた。
2点目を生んだのは、DF2人をさばいた香川。
そして、後半26分だ――。
ペナルティエリアにさしかかるところで寄せてきた2人の相手を上手くブロックした香川がパスを出す。これをムヒタリアンがダイレクトで折り返し、ロイスが蹴り込んで2点目が生まれた。この日の戦いぶりをみれば、勝利は決定的だった。
そのまま2-0で試合をおえたあと、少し表情をゆるめた香川はこう話した。
「一連の流れは、結果としてすごく良かったですし、1つ自信につながるというか。ここ数試合、僕は得点に絡めていなかったのでね。ちょっと絡めたというだけですけど、気分的には少しラクになった自分もいたので。やはり攻撃の選手にとっては、得点にからむことが大きなものをもたらしてくれるんだなということを心身共に、感じました」
ヨーロッパのカップ戦では、ファーストレグをホームで戦うチームの方がどうしても不利になる。ただ、そのファーストレグで失点をせず、2点以上の点差をつけられた意味は決して小さくない。