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地方競馬の年度代表馬と最多勝騎手。
「NARグランプリ」のたまらない魅力。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byAkihiro Shimada
posted2016/02/06 08:00
年度代表馬ハッピースプリントの関係者たち。右から3番目が調教師の森下淳平氏。
“格上”のJRA勢に挑む姿のたまらない魅力。
しかし、年度代表馬にはなったものの、先述したように、川崎記念、かしわ記念、帝王賞のほか、南部杯、JBCクラシック、東京大賞典などでは、ホッコータルマエやワンダーアキュート、コパノリッキー、サウンドトゥルーといったJRA勢に突き放され、「アウェー」の東京で行われたフェブラリーステークスに至っては11着と、デビュー以来初めてのふた桁着順に惨敗している。
また、父アッミラーレという血統も、キングカメハメハやクロフネなどの名が見えるJRA勢に比べると地味であることは否めない。
それでも怯むことなく、強い相手に立ち向かっていく――この勇ましさが見る者の心を揺さぶり、地方競馬のファンにとってはたまらない魅力となっている。地方の馬は、「JRA勢にどれだけ太刀打ちできるか」が重要な評価基準になっているわけだが、だからといって、ファンは単なる判官贔屓で支持しているわけではない。
地方競馬には、ファンと馬との距離の近さであったり、肩肘張らずに楽しめる雰囲気などから来る独特の魅力が確かにある。かつて寺山修司や山口瞳が親しみをこめて「草競馬」と呼んだ空気の匂いから来るもの、とでも言うべきか。
中央のトップクラスを負かすには……。
話を地方勢とJRA勢の力の差に戻すと、これまで、地方に在籍したままJRAのGIを勝ったのはメイセイオペラ(1999年フェブラリーステークス)のみ。かくも圧倒的に強いJRA勢とハッピースプリントが戦っていくうえでの課題について問われると、森下調教師はこう答えた。
「中央のトップクラスを負かすには、キツいペースで先行しながら脚を溜め、余裕を残して直線に向くことができるくらいの力が必要になってきます。勝負どころでもっと手応えよくついて行けるような調整に去年から取り組んでいますので、今年はさらにいいレースをしてくれると思います」
今後は、かしわ記念(5月5日、船橋)から帝王賞(6月29日、大井)に向かう予定だという。