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地方競馬の年度代表馬と最多勝騎手。
「NARグランプリ」のたまらない魅力。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byAkihiro Shimada
posted2016/02/06 08:00
年度代表馬ハッピースプリントの関係者たち。右から3番目が調教師の森下淳平氏。
地方の最多勝利騎手は、297勝の森泰斗。
'15年の最優秀勝利回数騎手賞、および最優秀賞金収得騎手賞を受賞したのは、297勝を挙げ、7億4428万2000円の賞金を収得した、船橋の森泰斗だった。勝利数は、2位の川原正一(兵庫・247勝)に50勝差、賞金は2位の矢野貴之(大井・5億8963万4500円)に1億5000万円以上の大差をつけた。
「目標としていたので、獲ることができてホッとしています。開催日数の多い南関東で、'14年はリーディングを獲ったのに、全国では1位になれず、情けなかった。今回初めて全国トップになることができたのは、いい馬にたくさん乗せてもらった結果です。関係者と、愛馬たちに感謝の気持ちで一杯です」
そう話した森は、今年35歳。JRAの競馬学校にあたる地方競馬教養センターでは戸崎と同期だった。'98年に足利競馬場でデビューするも、一時は騎手免許を返上して引退。その後再デビューしたが、足利競馬場の廃止にともない'03年宇都宮に移籍。'05年に宇都宮が廃止されると、現在の船橋に移った。その後も、'07年は16勝に終わるなど苦しい時期もあった。
「くすぶっていたとき、自分にはこの仕事しかない、と思ったんです。必死にやってダメなら諦めがつきますが、一生懸命やっていなかったので、やれることは全部やるように切り換えました。そのうち、たくさんの人に応援してもらえるようになったことが大きかったと思います」
南関東のエースとしての思いについて訊かれると、静かな口調でこう言った。
「自分がエースになったとは思っていません。まだまだ未熟なので、技を磨かなくてはならない。こういう賞をいただいたことを励みにして、地方競馬を盛り上げていきたいですね」
今年は300勝、そしてJRA勢とやりあう。
そして、今年の目標は――。
「去年ギリギリのところで届かなかった300勝を超えて、全国リーディングはもちろん獲らなくてはいけない。そして、東京ダービー制覇を一番の目標に掲げて、頑張っていきたいと思います」
収得賞金は意識していなかったようだが、勝ち鞍に関しては「園田の騎手がたくさん勝つので、毎日チェックしながらやっていました」と言う。
この森泰斗のように、個性的な騎手がたくさんいるところも地方競馬の大きな魅力である。
もう一頭の年度代表馬と、もうひとりのリーディングジョッキー。彼らは、エリートコースを進む、強いJRA勢といかにやり合っていくのか。今後が楽しみだ。