サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
決勝で戦う日本と韓国は似た者同士?
「自分達は弱者である」という思想。
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byAFLO
posted2016/01/29 11:00
水原所属のクォン・チャンフンがこの世代のエース。中盤に中心選手がいるのも日本との共通点だ。
日本と共通する「弱者としての割り切り」。
大会前の低い期待度、突出したスター選手の不在、フル代表選手の少なさ。そしてこれらマイナス要素を覆した大会期間中のチームの成長。
ファイナリストとなった日韓両チームは、似通った点が多い。さらにもう一つ、共通している点がある。
「弱者としての割り切り」だ。
今回の日本代表チームの立ち上げ期、2014年6月の堺での合宿を取材した。手倉森誠監督は、縦への意識を強調する練習を繰り返し選手に課していた。イラク戦でも相手に押される中で、カウンターからチームとして試合で最初のシュートから久保裕也が先制した。
ポゼッションよりも、相手との力の差を考えたリアリティを。この変化は、フル代表のブラジルワールドカップでの敗退の影響もあるのではないか。
いっぽう今回の韓国代表では、「多様なフォーメーション採用」も「割り切り」の一環と言える。そして、この歴史は韓国の方がはるかに深く、長い。韓国のワールドカップ挑戦史では「アジア予選(準備過程)での結果が悪い方が、本大会での成績がいい」という事実がある。近年で象徴的だったのが、2013年6月にホン・ミョンボがフル代表監督就任時に口にした言葉だ。
「ワールドカップでは、はっきり言って韓国より弱いチームはない。だからまず守備組織から構築していく」
日本の技術に対策を立てられる、という自信。
じつは日本を相手にした際にも、このメンタリティが強さを発揮してきた。よく「韓国は日本に対して常に自信をもっている」という話を聞くが、これを細かく読み解くと「相手の技術を警戒したうえで、しっかりと対策を立てられているという自信」ということだ。
筆者が長年韓国を取材してきた限りでは、'97年のフランスワールドカップアジア最終予選あたりから、日本への警戒は始まっていた。チーム内では「東京では負けたとしても1ゴール差でソウルに戻ろう」とチーム内で話していたという。技術では相手が上回る、という割り切りだ。
何より、監督のシン・テヨン自身も「日本対策」を強く実践してきた。2010年、 城南一和を率いてACL優勝を果たした際に、グループリーグで川崎フロンターレにホームで2-0、ラウンド16でもホームでガンバを3-0で降した。大会後の取材でのシンの言葉が印象的だった。
「我々とJリーグ勢の違いは、中盤を省略できるかどうかだ。日本のチームはつねに中盤をしっかり作ろうとするからね。どんな試合展開であっても。我々は思い切って前に長いボールを入れることができる」