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決勝で戦う日本と韓国は似た者同士?
「自分達は弱者である」という思想。
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byAFLO
posted2016/01/29 11:00
水原所属のクォン・チャンフンがこの世代のエース。中盤に中心選手がいるのも日本との共通点だ。
「150通り」と監督が語る戦術のバリエーション。
そんなチームを変化させ、決勝にまで導いたのが、シン・テヨン監督だ。むしろ、監督こそがこのチームの最大のスターと言っても過言ではない。フル代表とは縁が浅かったものの、'90年代前半から'00年代前半にかけて国内最多の優勝回数を誇った城南一和(現城南FC)の中心選手として活躍した。'06年に引退後、監督として2010年に同チームをACL優勝に導きもした。
シンは、今大会前からこんなことを口にしてきた。
「相手を当惑させるために、多くの戦術を準備する。選手起用と組み合わせれば、150通りくらいになるのではないか?」
フォーメーションをみても、4-2-3-1、4-1-4-1、4-4-2などを使い分けている。
準決勝でも、3つの布陣を使い分けて勝利。
五輪本大会への出場権を獲得した26日のカタール戦では、この手法が大きな力を発揮した。
キックオフ時には、過去にほとんど採用されなかった3-4-3で臨み、国内メディアを驚かせた。相手のホームゲームである点、攻撃力の強さを考慮し、2枚のCBの間にさらにMF登録で186cmのパク・ヨンウを配した。サイドMFが高い位置を取り、かつ中央の守備が4バックより一枚多いシステムで相手のサイド攻撃の威力を軽減させることに成功したのだ。
よい流れを保った韓国は48分に先制する。すると指揮官は、選手が使い慣れた4-2-3-1にフォーメーションを戻し、安定したゲーム運びをはかった。相手がより攻勢に出てきた状況を判断してのことだ。
ところがチームは79分に失点を喫し、ゲームは1-1の振り出しに戻ってしまう。指揮官の判断は素早かった。80分にFWファン・ヒチャンを投入。4-4-2に変更し、ゴールを狙いにいった。
89分に右サイドを突破し、これを主軸のクォン・チャンフンが左足で合わせた。後半アディショナルタイムにダメ押しの3点目を決めたのは、途中出場のムン・チャンジン。相手3人をかわしてのスーパーゴールだった。