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ミラン監督「本田は優れた一兵卒」。
“潰し屋”としてチームの中心に復活。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2016/01/25 17:00

ミラン監督「本田は優れた一兵卒」。“潰し屋”としてチームの中心に復活。<Number Web> photograph by AFLO

冬の移籍も噂されていた本田だが、守備という新たな能力を開花させ、再びスタメンに定着しつつある。

ずっと“王様”でいられる選手はいない。

 キャリアを通してずっと“王様”でいられる選手はいない。例外はメッシやC・ロナウド、イブラヒモビッチら一握りの人間だけだ。

 未完の天才FWカッサーノ(サンプドリア)は、過去に何度か名門ユベントスへ入団するチャンスがあったと複数のインタビューで明かしている。

 しかし、どんなスター選手であれ“勝利以外は無価値”を信条とする常勝軍団で求められるのは、滅私奉公の精神だ。自他ともに認める類稀な才能の持ち主だったカッサーノは「俺は一兵卒なんかにはなりたくないね」と、にべもなく誘いを蹴った。

 そして、カッサーノは走れない33歳になった。今、彼を欲しがるクラブがどれほどあるだろうか。

 思えば昨年のこの時期、本田はアジアカップ出場のためにミランを留守にしていた。

 昨季、開幕から本田を重用したインザーギ監督(当時)は、'15年1月のリーグ戦4試合を1分3敗と大きく負け越し、この大失速が最終的にEL出場権を逃す要因となった。

 鬼門であるはずの1月に本田はスタメンの地位を取り戻し、シーズン序盤から中位で苦戦してきたミランは、EL出場圏内をうかがう位置にまで浮上し、踏み留まっている。

栄えある10番ではなく、一兵卒として。

 もちろん、コッパ・イタリア準々決勝で下したカルピのように明らかに戦力の劣る相手との対戦ならば、今のミランでもボールを制し、フィジカル勝負で余裕をもちながら優位にプレーすることはできる。カルピ戦でFWバッカの先制点を導いた本田のスルーパスは鮮やかだった。

 一方でミハイロビッチのチームには、4-4-2を全く異なる使い方をするアプローチも浸透してきた。

 強豪相手には、自陣へ引きボールポゼッションを譲っても、敵のストロングポイントを潰し、泥臭く勝ち点を取りにいくことを厭わない。

 いわば“地方クラブの気概をもったミラン”の精神を最も忠実に体現しているのが、新たに潰し屋としての顔を発揮しつつある本田だ。

 今週末には、3位インテルとのミラノ・ダービーが控えている。

 今の本田は、王様でも司令官でもない。伝統あるダービーでも、彼は栄えある10番としてではなく、最前線の名もなき一兵卒として、不恰好にピッチの泥と芝草にまみれるだろう。チームが最も必要とする目前の勝ち点のために。

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