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ロッテ高卒ドラ1・平沢大河の強心臓。
1年目からの活躍に必須な原点とは?
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKyodo News
posted2016/01/10 10:40
ロッテが高校生野手を1位指名したのは、2002年の西岡剛以来のことだ。
プロでの同僚・成田から放った本塁打に見る非凡さ。
初戦の一発でチームに勢いを与えると、準々決勝ではプロで同僚となった秋田商・成田に先制弾をお見舞いし、準決勝の早稲田実戦では試合を決める3ランを放った。仙台育英の佐々木順一朗監督が、「いつも打率は低いけど大事なところで打ってくれる」と舌を巻いていたように、トータルでの打率こそ2割4分(25打数6安打)だったが、甲子園で披露した3発はプロのスカウトたちにインパクトを与えるには十分だった。
平沢の打撃で最大の特徴を挙げるとすれば、高度な適応能力になるだろうか。
例えば、「体の開きが早い」と自認すれば即座に逆方向を心がけ、実践してみせた。甲子園での試合ならば、3回戦の花巻東戦で左腕の高橋樹也のスライダーに苦しみ無安打に封じられたことを教訓とし、次の秋田商戦で成田から本塁打を放ってみせた。当時、その伏線を平沢はこう述べていた。
「前の試合(花巻東戦)でスライダーが打てなかったんですけど、今日のピッチャー(成田)もスライダーが得意だと分かっていたんで。そういう意識があれば落ち着いてボールを待つことができるし、あとは自分の反応を信じるだけでした」
プロでは二軍投手の変化球でさえ「ボールが消える」。
打席での対応能力や苦手意識を持たない強いハートが、平沢にはすでに備わっているわけだ。この武器をプロで生かさないわけにはいかない。
そのために、プロでは今一度、原点に立ち返り、徹底的にバットを振り込む必要がある。
高校時代にスラッガーとして脚光を浴びた選手であっても、プロに入れば二軍投手の変化球でさえ「ボールが消えた」と驚愕するそうだ。
そこに適応していくためには、自分の打撃フォームを作ることのほうが大切――そう説いていたのが、ロッテの打撃コーチ時代に今江敏晃や西岡剛を中心選手に育て上げた、現オリックス打撃コーチの高橋慶彦だった。