サムライブルーの原材料BACK NUMBER
自分のプレーができないときに――。
青山敏弘の変貌を生んだ「自分の幅」。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/12/25 10:40
CWCでも3位に入り、広島にとっては充実のシーズンになった。その中心に青山がいたことは間違いない。
言葉にするなら、機を見るに「敏」。
ホームにガンバ大阪を迎えたチャンピオンシップ決勝の第2戦もそうだった。序盤、硬くなっていたチームの緊張を解くように、相手のパスの出どころを前に出て押さえに掛かることで、試合のペースを自分達の方へ引き寄せていった。
言葉にするなら、機を見るに「敏」。
ロングパス、ミドルシュートという彼の攻撃的な特長もさることながら、今季は特にチームの勝利につなげていこうとする献身的なプレーが目を引いた。リーグMVPも当然といえるだろう。
「自分の幅が広がってきているのかな」
10月、アウェーでヴァンフォーレ甲府に2-0で勝った後、彼に話を聞く機会があった。守りを固める甲府に対して2ゴールを奪い、逆に堅い守りで無失点に抑えた。青山は真っ先に守備のことに触れた。
「自分というよりも、前にいる選手が(守備で)助けてくれました。相手に先制点を取られなければ、常に主導権を持ってやれているという感触はある。後半に入ったら(リードされている)相手が出てくるのは分かっていたし、まずはみんなで守ってゼロで進めていく。カウンターで1点取れれば何も文句はないですけど、それよりもまずはゼロ」
泥臭い仕事にこだわっているように見えると、今季の印象を本人にぶつけてみると彼は頷きながら言葉を返してきた。
「自分の場合、ボールを持ったときにチームの役に立てていなかったので、そこで少しでも貢献していきたかった。ただ、闘うところ、運動量、カバーリング、セカンドボール……こういった部分を凄く意識してきた分、自分の幅が広がってきているのかなとは思う」
ボールを持ったときのプレーでも足りない部分を必死に埋めようとしながら、うまくやれないと感じたら気持ちを切り替えてボールを持っていないところでチームの役に立とうとする。
このとき、イトゥで絞り出した彼の言葉が脳裏をよぎった。
自分のプレーができないときに、どうするか――。