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海外バレー経験を後輩に伝えたい――。
元代表・佐野優子が“エージェント”!?
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNoriko Yonemushi
posted2015/12/16 10:40
現役引退から7カ月。佐野の印象は現役当時とさほど変わらないが、表情の端々に“柔らかさ”を感じた。
「日本人はすぐそうやってファインプレーに見せたがる」
では、佐野自身が変えられた考えとはどんなものだったのだろうか。
海外に行く前は、佐野はリベロとして、フライングレシーブのような見た目に派手なプレーでチームを盛り上げることを求められた。しかし、初めての海外移籍先であるフランスのRCカンヌで、ボールに飛び込む佐野を見て中国人監督が発した言葉が、佐野に突き刺さった。
「日本人はすぐそうやってファインプレーに見せたがる。そんなプレーはいらないんだ」
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簡単なフランス語を並べただけの一言だったが、そこに皮肉が込められていることは理解できた。
「侮辱された気がして、最初はムカーッときました。でも、そう言われるということは、周りからは飛び込まなくても取れるように見えたということ。狙ってファインプレーをしたつもりじゃなかったけど、自然とそれが身に付いていたんだと気づきました」
ボールに安易に飛びつくよりも、足を動かしてすばやくボールの下に体を入れ、両手で受けた方が、より正確なボールを上げられる。当時の佐野のプレーは横着だとみなされたのだ。
当たり前のプレーを当たり前に、難しいプレーも当たり前のように。そんな佐野のプレーのベースはこの時から作られた。
日本では気づかなかった本当のプロ意識。
また、練習のやり方も日本と海外では違っていた。
日本では数多くこなすことがよしとされ、全体練習後に個人練習を行なうのはよくある光景だ。しかし海外は違う。
「日本では数多く練習することで、自分が納得したり、周りに認めてもらいたいという意識もあったりします。でもそんなことをしたところで、試合で勝てるわけじゃない。逆に海外は、限られた時間の中で集中してやることに意味があるという感じ。限られた中で力を出せるようにすることで、精神的に強くなれたり、力の出しどころが身につくのかなと思った。『一歩大人やな』と思いましたね。結果がすべてというプロ意識が自然と身についているのかなと感じました」
そうした気づきが、佐野のプレーと意識を変え、全日本の不動の守護神へと押し上げた。