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海外バレー経験を後輩に伝えたい――。
元代表・佐野優子が“エージェント”!?
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNoriko Yonemushi
posted2015/12/16 10:40
現役引退から7カ月。佐野の印象は現役当時とさほど変わらないが、表情の端々に“柔らかさ”を感じた。
“武勇伝”が要らない環境を作るために。
とはいえ、海外に出て、いい思いばかりをしたわけではない。日本にいれば経験しなくていい苦い人生経験も味わった。
エージェントに「ぼったくられた」こともあれば、チームの勝手に振り回されたり、ギャラの一部が支払われなかったこともあった。
最後に所属した海外チームであるスイスのボレロ・チューリッヒでは、佐野がシーズン途中に契約解除を申し出たが、いっこうに話が進まなかった。そこで佐野は、本人いわく「つたない英語で」オーナーに直談判し、帰国した。
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そんな武勇伝も、「強烈やったね、アハハハハ」とあっけらかんと振り返る。
アクシデントを乗り越えるたび佐野は強さを増した。プレーの安定感だけでなく、感情の起伏が小さく、どんな舞台でも動揺を表に出さない守護神は周囲に絶対的な安心感を与えた。
海外での失敗談や苦労話は尽きないが、それでもなお、後輩たちに勧められるだけの魅力が海外にはあると、佐野は信じている。
「これからは人のことだから、責任重大です」
今はまだ準備期間だが、仕事は京都の自宅を拠点に行なうつもりだ。RCカンヌ時代のチームメイトが既にエージェントとして活躍しており、当面は彼女を通じて日本と世界の橋渡しをする。
契約の話が具体的に動き出せば、交渉相手のチームや選手をその目で見るために、また海外を飛び回ることになる。
「今までは自分のことだったけど、これからは人のことになるから、責任重大です」
かつて、周囲の反対をものともせず海を渡り、自らの力で活路を開いた“行動力の人”は、また新たな道を開拓していく。