オリンピックへの道BACK NUMBER
誇るべき五輪ドーピング違反者ゼロ。
ロシアの騒動が日本に及ぼす影響は?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byREUTERS/AFLO
posted2015/11/23 10:40
11月9日、ジュネーブでの会見に臨む世界反ドーピング機関元会長・第三者委員責任者のディック・パウンド氏(左)。
なぜドーピングはなくならないか?
その後も、あまりにも多くの選手が摘発されてきた。
大きな理由としてあげられてきたのは、結果への見返りとして得られる収入だ。オリンピックや世界選手権での好成績は、スポンサー収入であったり、ビジネスチャンスとなる。
また、以前アメリカの選手を対象にしたアンケートを目にしたことがあるが、金銭などの見返りは関係なく、「絶対に捕まらないという前提で、能力を向上させて勝てるなら使用するか」という問いに、少なくない選手が「YES」としていたのを覚えている。
さらに、かつての東欧諸国、おそらく今回のロシアもあてはまると思うが、国威発揚を目的とするものである。
記録上の最初のドーピングは、1865年の水泳選手までさかのぼることができる。1886年には自転車競技で、ドーピングによる最初の死亡事故が起こっている。それほど、関係を断ち切ろうとして、完全に断ち切れずに今日まで来ている。それも根深さを物語っている。
日本には五輪でのドーピング違反者がいない。
その中で、日本では、これまでオリンピックでドーピング違反を犯した選手はいない。2020年のオリンピック招致活動においても、その点を繰り返しアピールし、海外のオリンピック関係者からも評価を得た。
オリンピックにかかわらないところでは、ときに違反者が出ることがあった。ただ、そのほとんどは強化のためというより、違反成分が含まれていることを知らないまま、日用品の延長として使用してしまった、などのケースであった。
なぜ日本では、ドーピング違反を犯す選手がこれほどまでにいなかったのか。
これまでに聞いた話は、こうだ。
「駄目だと教えられて、それを素直に聞く選手、コーチが多かったから」
「リスクを冒しても、それと比較すれば、得られるもの(報酬)が日本ではごくわずかでしょう。海外のオリンピアンとは違いますから」
「うーん、いけないことだと思うし、それで勝ってもうれしくないし、やっぱりフェアじゃないですよね」
「悪いことだとみんなが思っているからでは?」
「やっぱり、みんなに迷惑がかかるから」