今日も世界は走っているBACK NUMBER
都市型フルマラソン増加の陰で――。
規模や人気よりも大切な事を考える。
posted2015/11/14 10:30
text by
金哲彦Tetsuhiko Kin
photograph by
Sports Graphic Number
11月はマラソン大会のオンシーズン。
全国各地でさまざまなランニングレースが開催されている。とりわけ今年は、大規模な「都市型フルマラソン」がいくつか創設された。
北陸新幹線の開通を記念した「富山マラソン」と「金沢マラソン」。
有森裕子さんが引退後初めてフルマラソンを走った「おかやまマラソン」。
そして、「さいたま国際マラソン」などである。
いずれも県が主催に参加する大会で、地元の新聞社やテレビ局が積極的に関わり大会を盛り上げている。なかでも「さいたま国際マラソン」は、「横浜国際女子マラソン」の終了に伴い埼玉に移ったレースとして、女子のリオ五輪選考レースを兼ねている。「東京マラソン」のように市民ランナーからトップアスリートまでを網羅した大規模な大会だ。
レース開催地のランニング人口は急激に増える。
新設されるマラソンに絡んで気になることがいくつかある。まずは、レース開催地の“ランニング人口”が急激に増えること。
もともとランニングに興味や経験がない人でも、地元にマラソン大会ができることで、大会のポスターなど広報物を目にする機会が増え、マラソンに関する話題が増える。開催地域にランニング熱が高まるのだ。
関門時間がゆるく、なかには「地元ランナー枠」が設定されているレースも。
「せっかく地元に大会ができたのだから走ってみようか」と、半ばお祭り気分になるのだと思う。
健康維持のためのランニングでは少々腰が重いが、イベントならモチベーションもあがる。
たとえば、こんな話もある。
居酒屋の飲み仲間同士が地元で開催されるマラソン大会の話題になった。酔った勢いもありみんなでエントリー。そして、飲み屋で会うたびトレーニングの成果を自慢しあい、全員無事に完走したそうだ。