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誇るべき五輪ドーピング違反者ゼロ。
ロシアの騒動が日本に及ぼす影響は?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byREUTERS/AFLO
posted2015/11/23 10:40
11月9日、ジュネーブでの会見に臨む世界反ドーピング機関元会長・第三者委員責任者のディック・パウンド氏(左)。
選手に対する、道具に過ぎないかのような扱い。
ロシア側は当初、疑惑そのものを否定していた。だがその後、落としどころを探ろうとしているように思える。例えば、プーチン大統領は11日、こう話したという。
「ドーピングはロシアだけの問題ではない」
「責任は個人が取るべき」
2つの言葉にうかがえるのは、ドーピングが行なわれていることを暗に認める一方、組織ぐるみではないという主張である。つまりは、組織丸ごとのペナルティーを回避しようという意図だ。
だが、委員会は、薬物の使用を拒否した場合、選手は代表選手になれないことなども報告した。組織的に行なわれていたことを浮き彫りにするとともに、選手はただの道具に過ぎないかのような扱いがされていたことも伝わる。ひどいことだ。
ロシア一国のみの問題ではない。
ことはロシア陸連にとどまらない。
委員会の記者会見に先立つ8日、イギリスの「サンデー・タイムズ」は、ロンドン五輪の前、IAAFのディアク前会長、ドーピング責任者の医師であるドレ氏が、陽性反応を示したロシアの8選手を見逃す代わりに賄賂を受け取り、この8選手はロンドン五輪に出場。同大会の金、銀メダリストが含まれていたと報じた。2人は収賄疑惑でフランス当局の捜査を受けているという。IAAF自体のドーピングへのこれまでの取り組みにも疑惑が生じている。
1つ加えるなら、ドーピングはロシア一国の問題ではない。
摘発された件以外にも多数の疑いがあると今年8月、「サンデー・タイムズ」などが報じている。2001年から2012年までのオリンピック、世界選手権の中長距離種目146個のメダル獲得者にドーピングの疑いがあるとしたものだ。IAAFが約5000人から採取した約1万2000件の血液データが内部告発で外部に伝わり、専門家が再調査した結果の数字だ。選手名は公表していないものの、選手を国別に表している。多くの国がそこに含まれる。
ドーピングを禁じても、選手は網の目をかいくぐろうとし、その摘発はこれまでも繰り返されてきた。かつて冷戦時代、東欧諸国、特に東ドイツなどで今回のロシアのように、国の取り組みとして、積極的にドーピングを行なっていたことは知られている。