オリンピックへの道BACK NUMBER
誇るべき五輪ドーピング違反者ゼロ。
ロシアの騒動が日本に及ぼす影響は?
posted2015/11/23 10:40
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
REUTERS/AFLO
陸上界が、いやスポーツ界が大きく揺れている。
11月13日、国際陸上競技連盟(IAAF)は臨時理事会を開き、ロシア陸上競技連盟を暫定的な資格停止処分とすることを決めた。
これによって、処分が解除されない限り、ロシアの選手は国際大会に出場することができなくなった。また、国際大会を開催することもできない。11月15日のさいたま国際マラソンに出る予定だったロンドン五輪で銅メダルを獲得したロシアのタチアナ・アルヒポワは出場停止になり、13日の処分はすぐさま適用された(同日に開催された金沢マラソンで優勝したビクトル・ウガロフ選手は記録抹消となった)。
このままなら、ロシアの陸上選手はリオデジャネイロ五輪にも参加できない。重い処分が下ったのは、ロシア陸上界で組織的にドーピングが行なわれていると結論付けたからだ。
治安機関まで関わった国ぐるみのドーピング。
今日に至るきっかけとなったのは、昨年12月、ドイツのテレビ局「ARD」がロシアにおけるドーピングに関するドキュメンタリーを放送したことだった。番組では、ロシア陸上選手や関係者による告発とともに、ロシアでドーピングが蔓延している実態が伝えられた。
その後、世界反ドーピング機関(WADA)の第三者委員会が調査を開始し、11月9日、記者会見を開いて結果を発表。そこでなされた報告はあまりにも衝撃的な内容だった。
委員会は、協力者によって録音されたコーチと選手とのやりとりなど、緻密に証拠を積み重ね、ロシア陸連、コーチ、選手たちがドーピングを行なっていた、つまり組織的に推進していたと認定。そればかりではない。ロシア国内にあるドーピングを検査する機関も1400以上の検体を破棄するなど隠蔽に協力し、陽性反応を隠すかわりに賄賂を要求していたことも報告された。ロシアのスポーツ省、治安機関が関わっていたことも指摘している。国ぐるみで行なっていた、としたのである。
その上で、委員会は、ロンドン五輪女子800m金メダルのマリア・サビノワら5選手、コーチなどの永久追放を求めた。またリオデジャネイロ五輪への出場資格停止を勧告。それを受けての理事会で、暫定資格停止処分が下されたのである。