ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
アメリカは20代が7戦連続で優勝中。
日本男子ゴルフが若者に厳しい事情。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byGetty Images
posted2015/11/05 10:40
石川、松山以下の世代の日本人で唯一優勝経験を持つ川村昌弘。
下部ツアーの環境がトップと違いすぎる?
中堅選手が指摘する問題のもうひとつが、レギュラーツアーとその下に属する「環境の差」である。
ここ数年、長きにわたって第一線で活躍しながら、シード権を失って下部ツアー(チャレンジトーナメント)を経験するベテランも多くなった。桑原克典、細川和彦、横尾要……。彼らのようなプレーヤーは一様に、そこに言及する。
「ピン位置やグリーンの硬さ、速さにしても、チャレンジツアーとのセッティングの差が激しい。レギュラーに上がってきた若手は戸惑ってしまうのでは。チャレンジからツアーに来ていい成績を出すのはなかなか難しい。本当に力のある選手でないと、対応できずにすぐにまた(下部に)戻ってしまう」
いずれトップツアーで活躍する選手を育成するのが、下部ツアーの大きな存在意義。それがコースの難易度の乖離が激しく、別の戦いを強いられるのであれば、元も子もない。
若い才能は、確かに芽吹いている。
なにもプロの世界に限った悩みではなく、これに似た環境面の差は学生上がりの選手も感じるところ。今年ルーキーイヤーを戦っている22歳の堀川未来夢の“うれしい悲鳴”は、レギュラーツアーの会場における施設の充実ぶりによるものである。
堀川は今年春に大学を卒業したが、静岡県内の学生寮に残り、後輩学生たちと切磋琢磨する日常に自ら身を置いている。それでも「大学の施設も素晴らしいんですけど、(レギュラー)ツアーに来るとさらに良くて、練習をどんどんしたくなる。逆に疲れが溜まってしまい、体調管理が難しいんです」という。トーナメントコースの練習場は、日本の多くの学生、若手アマチュアにとっては“夢心地”。ほとんどの土地で、青々とした芝生の上から打てる米国のベーシックなゴルフ環境とはやはり違う。
堀川は今年9月のネスレ日本マッチプレー選手権で石川遼を破り、10月のブリヂストンオープンでは21歳の稲森佑貴とともに優勝争いの一角に加わった。23歳の今平周吾も来季の賞金シードを確実にしている。目を凝らせば、有望な新鋭は芽吹いているのが分かる。
若きスターの台頭が“物足りない”もどかしさは、いま男子ツアーが抱える慢性的な問題と隣り合わせ。易々と解消されるわけではない。しかし裏を返せば、この閉塞感から突き抜けた選手は、一気にブレークできる可能性を秘めているはずである。
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