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現在のセリエAで最も強いチーム!
サッリとイグアインが導くナポリ。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/11/05 10:30
アルゼンチンの誇るスーパーFW陣の一角、イグアインが今季は完全復活した。
下世話な語り口、ジャージ姿も愛される一員。
チームの実力はある。課題は、長丁場の戦力マネージメントだ。
チームの新たな骨格を固める必要のあったサッリは、ここまで先発の多くを固定起用してきた。そのせいで、出場機会の少ないFWメルテンスらに起用法への不満が溜まり始めている。快勝を続けるELでのプレーだけでは、彼らも満足できない。首位争いのヒリヒリした緊張感を、彼らも味わいたいのだ。
ロッカールームの雰囲気を察したデラウレンティス会長は「少しぐらい文句を言う方が、元気があってよろしい」と、あえて鷹揚なコメントを出した。
ナポリっ子たちの支持を得るには、上品なボキャブラリーは役に立たない。もちろん、サッリも単なる田舎オヤジではないのだ。彼の語り口は朴訥でも、言葉の端々に下町で育った凄みが滲む。
「今日はちいとばかり、うちに“ケツがなかった”」
ケツがないとは、運がないというイタリアの俗語表現だ。
11節のジェノア戦で、ナポリはスコアレスドローで首位を取り損ねた。試合後の会見で、イグアインへのファウルはPKだったと抗議する代わりに、サッリは一服した後のとぼけた顔で、審判の判定へ毒づいた。地元メディアが気恥ずかしそうに指摘すると「私の言葉遣いが俗すぎる? “ケツ”なんて、今どきバチカンでも使うだろう?」と、さらにとぼけた。サッリは、とことん食えない曲者指導者なのだ。
ジャージ姿で一刻もタバコを手放さないサッリの風貌は、まるでどこかのただのオッサンで、ナポリの選手たちもジャージ姿がお決まりだ。だが、彼らは掛け値なしに強い。
粗にして野だが卑ではない。
混迷を極めるセリエA上位戦線にあって、首位を争うチームの監督たちは、マンチーニ(インテル)からガルシア(ローマ)まで、いずれも試合中のスーツ姿がピシッと決まる伊達男ばかりだ。
大一番のフィオレンティーナ戦を前に、イタリアの著名なファッション評論家が「ゲームは晴れの舞台。サッリは最低でもジャケットを羽織って欲しい」と注文をつけた。だが、勝ったのは、見るからに小洒落たパウロ・ソウザではなく、コーチや用具係と同じ水色のジャージを身に着けたサッリだった。
タイムアップの笛が鳴ると両手を高く挙げて、満面の笑みを浮かべる。一つの白星をこれほど嬉しそうに喜ぶビッグクラブの監督は、久しくいなかった。
カンピオナートは、ユベントスが独走していた昨季までから一変した。
無頼のナポリは、粗にして野だが卑ではない。
本拠地サン・パオロに、彼らがインテルとローマを迎え撃つ14節と16節の2試合は、前半戦のハイライトになること間違いなしだ。