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現在のセリエAで最も強いチーム!
サッリとイグアインが導くナポリ。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/11/05 10:30
アルゼンチンの誇るスーパーFW陣の一角、イグアインが今季は完全復活した。
何度もPKを外した“後遺症”が心配されたが……。
今季が開幕する前、イグアインには“後遺症”が懸念されていた。昨季のイグアインは、PKを4本も失敗した。
とりわけ、最終節でのミスは高くついた。本拠地サン・パオロでのラツィオ戦はCL出場権をかけた直接対決となり、2点先行される苦しい展開に。後半に追いついた後、逆転できたはずのPKをイグアインは外してしまった。試合は2-4で敗れ、CLへの切符は幻と消えた。
さらにアルゼンチン代表として出場した夏のコパ・アメリカでも、チリとの決勝戦でPKを失敗し、準優勝に泣いた。プレシーズンキャンプの時点では、“精神的に打ちのめされたイグアインが立ち直るには、それなりに時間がかかるだろう”と誰もが考えていた。
しかし新指揮官サッリはイグアインを信頼し、ストライカーとして再び立ち上がれるよう、言葉を選んだ。
「私のチームでは選手の扱いは皆同じ。ただし、イグアインだけは別だ」
サッリは、特別扱いを内外にあえて公言することで、エースのプライドをくすぐり、自信と自覚を短期間で回復させることに成功した。当然、イグアインの人格的に増長することはなく、チームにも軋轢は生じないという計算はあった。
精神的に復調したイグアインは、5-0で大勝した4節ラツィオ戦で2ゴールを挙げ、最高の意趣返しを果たした。昨季まで苦手意識のあった地方クラブ相手でも、9節キエーボ戦で決勝ゴールを挙げた後、2-0で勝った10節パレルモ戦の先制点も決めている。
「継続性なしじゃ何も勝ち取れない。スクデットを獲るためには、1試合ずつ勝っていく」
今季のナポリにはまだ1本もPKが与えられていない。しかし、キッカーはもちろんイグアインに決まっている。
ベニテス時代にはなかった組織的な守備。
ナポリ最強説には、守備にも理由がある。
11節終了時点での8失点は、最少7失点のインテルに次ぐリーグ2番目だ。ELを含む今季の公式戦14試合のうち、無失点試合は8試合にも及ぶ。
中盤から高い位置でハイプレスのフィルターをかけ、最終ラインまで攻め込まれても、ゴール前からサイドへ、サイドへと追い込む。マークの受け渡しが確実で、相手のシュートアクションをきっちり断ち切る。
高い次元で保たれている攻守のバランスは、昨季までのベニテス時代には決して見られなかったものだ。