岩渕健輔、ラグビーW杯と東京五輪のためにBACK NUMBER
「負けられない戦いで、確実に勝つ!」
岩渕GMが語る、W杯ベスト8への道。
text by
岩渕健輔Kensuke Iwabuchi
photograph byGetty Images
posted2015/09/30 11:00
日本、アメリカを破ったスコットランドは、グループBトップとなっている(9月27日現在)。
データでは日本がスコットランドを上回る部分も。
実際問題、私が試合の序盤に抱いた印象も、南アフリカ戦とは正反対のものになりました。南アフリカ戦の場合、最初の10分間で「これはいける」という強い手応えを感じたことは、前回のコラムで述べた通りです。相手がいい攻撃を仕掛けてきたのに対して、日本側は猛攻をしのぎながらチャンスをうかがっていくという、ゲームプラン通りの戦い方ができていたためです。
しかしスコットランド戦では攻守にミスが重なり、相手に先行される展開になりました。逆にスコットランドは、非常に隙のないゲームマネージメントを展開してきました。自分たちの強みを最大限に活かしながら、日本の弱点を巧みに突いてきたともいえるでしょう。
とはいえ前半を終えた時点でのスコアは、7対12。日本代表はプレーの精度を欠きながらも、ロースコアで、なんとか試合をまとめることができていました。
同じことは、後半20分までの展開にしても指摘できます。日本は後半の開始直後にも、大きなチャンスをものにし、点差を縮めるのに失敗しましたが、相手にくらいついていました。その意味では、少なくとも後半20分までの展開に関しては、最終スコアほどプレーの内容に開きはありませんでした。
この事実は、数字にも現れています。統計データ(スタッツ)に関しては、日本がスコットランドを上回っている分野が少なくないからです。
たとえばボール支配率は日本が60%対40%で上回っていますし、獲得したテリトリーも64%に対して36%と凌駕しました。さらに日本はトータルのゲインでも上回りました。一方、エラーの数に関しても、実は日本とスコットランドではあまり差がありません。日本は16回、タックルの場面でミスをしましたが、スコットランドも12回、タックルを失敗しています。
スコットランドと日本の、ミスの違いとは?
にもかかわらず明暗が分かれた要因としては、やはり先に述べたようなディテールの違いが挙げられます。ミスに関していうならば、単純な数の違いというよりは、ミスの内容や「質」の違いが響きました。
スコットランドも、決してミスが皆無だったわけではないことは、試合をご覧になった方もおわかりいただけると思います。
しかしスコットランドは、失点に直結するような決定的なミス(ラグビーで言うところの「クルーシャル・エラー」)が起きる回数を、低く押さえていました。致命的なミスが起きた場合でも、チーム全体でカバーし、プレーの精度が悪いならば悪いなりの対応ができていました。これは日本との大きな違いです。
対照的に日本は得点差を詰めるチャンスをふいにしただけでなく、後半の20分過ぎからは、プレーの精度や判断の正確さをさらに欠くようになり、ターンオーバー(カウンター)から一気に突き放されていきます。このような展開は、最も避けなければならないものであることは言うまでもありません。本来であれば、日本こそ終盤に向けて、ペースを上げていかなければならない場面でした。