岩渕健輔、ラグビーW杯と東京五輪のためにBACK NUMBER
「最初の10分間で勝利を確信した」
岩渕GMが分析、南ア戦の歴史的勝利。
text by
岩渕健輔Kensuke Iwabuchi
photograph byGetty Images
posted2015/09/22 11:00
エディー・ジョーンズの「Japan Way」には、原辰徳(野球)、眞鍋政義(バレー)、アルベルト・ザッケローニ(サッカー)らから吸収したノウハウも生きている。
目標はあくまでも決勝T進出である。
しかし私たちは南アフリカと戦うためにだけ、W杯にやってきたわけでありません。スコットランド、サモア、アメリカと試合は続いていきますし、目標はあくまでもグループリーグを突破して、決勝トーナメントへ進出することにあります。
また今後は南アフリカ戦にも増して、厳しい戦いを余儀なくされることも予想されます。対戦相手は南アフリカを倒した日本を過小評価するのを止め、本気で対策を練り始めたからです。視点を変えれば、私たちはそのような状況の中でも本当に戦っていけるかどうかが、試される形になります。
「Fortune favours the brave」
試合が終わった後、私は周囲にいた各国協会の関係者から、さかんに祝福の言葉をかけられました。また隣に座っていた英国の知人は、元サッカー選手のマイケル・オーウェンが「Fortune favours the brave(幸運の女神は勇者にこそ微笑む)」という格言をツイートし、日本代表の勝利を讃えてくれたことも教えてくれました。
奇遇ではありますが、この格言は私が10代の頃からこよなく愛してきたフレーズで、青山学院を卒業する時の卒業文集にも引用した言葉でした。あれから20数年が経ち、日本代表のGMとして同じ言葉を噛みしめることができたのは、不思議な縁すら感じます。
W杯日本大会では優勝を狙う!
とはいっても、個人的な感慨に浸るつもりはありません。
私たちはW杯イングランド大会という名のゲームに挑み、最初のトライを決めたに過ぎないからです。さらに述べるなら今回の勝利は、スーパーラグビーへの参戦、そして2019年には世界でベスト4に入り、W杯日本大会が始まる際には優勝を狙えると公言できるようなっておくという目標を達成するためのステップでしかありません。
私はGMに就任してからの4年間、このような将来へのビジョンを公の場でも幾度となく掲げてきましたが、多くの場合は、あまり実現可能性の高い話としては受け取っていただけなかったような気がします。
しかし選手たちは、今大会でベスト8に入ることによって、未来への道を切り拓くのだという決意を秘めて試合に臨んでいました。その覚悟と責任感があればこそ、勝利は可能になったのです。