ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
日米で注目が集まるキャディの価値。
米は集団訴訟、日本はアプリで発信!?
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAFLO
posted2015/09/11 10:30
川村昌弘と海外を転戦することも多い小岸秀行さん(左)。選手とともに視聴者やギャラリーの目に触れるキャディは、半分裏方半分表舞台という複雑な立場なのだ。
素晴らしいプレーにプラスアルファが必要。
メディアの小さな扱いにも不満があった。ただ、当時を振り返って思うのは日本のゴルフ界には“プラスアルファ”が足りなかったこと。
「昔の女子プロの方には『素晴らしいプレーを見てもらえばそれでいい』というところが多かったのかもしれません。でもそれって、ファンにしてみれば当たり前なんですよね。プレーにプラスした“なにか”も見たい。ジョン・デーリーやバッバ・ワトソンみたいな選手には、すごいゴルフをすることプラス、面白いキャラクターがある。タイガーみたいに圧倒的な強さがあったり、ジェイソン・デイやアダム・スコットみたいにナイスガイだったり……」
瑞々しい若さや、ベテランが持つ高等技術だけでなく、選手個々が味わってきた経験や恐怖との戦いを知ってこそ、その1打のすごみが分かる。インターネットの普及後、誰でも情報発信ができる時代になって、構想は約10年。先輩、後輩のプロキャディ仲間を集めて起こした新たなムーブメントである。
日本人らしいといえば、そうなのかもしれない。
報道陣が立ち入れないロープ内の情報は、まさにゴルフファンが欲しがる貴重なネタ。口下手だったり、セルフプロデュース力に乏しかったりする選手には格好の手助けにもなる。また新鋭の若手選手や、シニアツアーなどマイナーといえる情報は特に大手メディアにも大いに活用してもらいたいというのが、サイトの願いである。
プロキャディが、個人ブログやSNSを活用するケースは過去にもあった。しかしそれらと一線を画すのが、複数のキャディが統一メディアで情報を発信することに加え、具体的なマネタイズ案を持っていることである。サイトに賛同するスポンサーを集め、将来的には記事への対価を各キャディに還元する構想だ。
一方では、あくまで裏方としてでもプロキャディが公に出ることによって、自分たちの襟を正す狙いもある。「玉石混淆ではダメなんです。“玉”を集めないと」。ただの“かばん持ち”ではない、という強いプライドと責任を持った集団になってこそ、地位向上は図られる。
小岸さんは、海の向こうで法的手段に出た同業者たちについて「ピンとこない。僕たちはスポンサー、ファンがあって生活できる。価値観の違いでしょうかね……」と言った。日本の、特に男子ツアーの苦境は痛いほど感じる。だからいまこそ一丸となって立ち向かいたい。
そんな彼ら、彼女らを、ツアーに食ってかかった本場のキャディたちよりも、なんだかずっと誇らしく思う。
日本人らしいといえば、またそうなのかもしれない。
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