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ハリルの“数打ちゃ当たる”作戦成功?
23分の0→34分の3は進化なのか。 

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松本宣昭

松本宣昭Yoshiaki Matsumoto

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2015/09/04 11:10

ハリルの“数打ちゃ当たる”作戦成功?23分の0→34分の3は進化なのか。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

攻守に存在感を発揮し、危なげなくカンボジアを下すうえで決定的な仕事をした吉田麻也。フィード時に見られるキックの精度は、地を這うミドルでも健在だった。

サイドを広げれば、隙間ができる。

 相手守備陣が分厚く固める中央のエリアへ、強引に突撃して跳ね返され続けたシンガポール戦とは打って変わり、この日は明らかに「外から」の意識が高まっていた。酒井宏と長友がサイドの高い位置でボールを持つことで相手の陣形を横に広げ、それによってできた隙間に本田や香川真司、武藤嘉紀が走り込む。または、ファーサイドへクロスを送る。

 61分には長友が左サイドのタッチライン際で長谷部誠からのロングパスを受け、相手が食いついたところで中央の山口蛍→本田→岡崎慎司とつなぎ、岡崎のシュートが相手に当たったところを香川が右足でゴールに叩き込んだ。

吉田はなぜミドルを打てる位置にいたか。

「ミドルシュートを増やすこと」と「外から攻めること」は、チームとして、引いた相手から点を取るために準備した戦略だ。

 カンボジア戦では、それだけではなく選手個人が状況に合わせた判断でプレーを変える場面もあった。それが、3カ月前と変わったところ・その3だ。

 50分の場面、ペナルティーエリア手前に、本来ならいるはずのないセンターバックの吉田が顔を出し、ミドルシュートを決めた。これと同じように、彼は前半から何度か攻撃参加を試みていた。

「僕とモリゲ(森重真人)が攻め上がっていたのは、監督からの指示じゃない。カンボジアは1トップの選手が前に残っていたから、僕らが前に出ると後ろは数的同数になってしまうけど、状況を見ながら判断した。試合の途中からモリゲと話して、『これなら数的同数でも大丈夫』というときには、前に出るようにした」

 リスク(カウンターを浴びる危険)とリターン(より厚みのある攻撃)を慎重に天秤にかけ、積極策を採った吉田の判断が、試合を決める2点目をもたらしたわけだ。

 シュートへの意識を高め、中から外へと攻め手を変え、個々が臨機応変に判断することで、格下からきっちりと勝ち点3を奪った。ただし、3カ月前から全然変わらなかった部分もある。ゴールを奪う上で一番大事な「シュートの精度」だ。

【次ページ】 世界でも際立つ日本の“外しっぷり”。

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