スポーツ百珍BACK NUMBER
アメリカサッカーはほとんどWWEだ!
DJはミスを煽り、ピルロは老人扱い!?
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byAFLO
posted2015/08/25 10:40
アンドレア・ピルロ対カカ、こんなマッチアップが見られるMLS。わかりやすいビッグネームにわかりやすい煽り、アメリカで流行るためには、サッカーも変化をするのだ。
ビールやチケットの価格に滲む「稼ぐ意識」。
多少の胃もたれを感じながらも、飲食物を見て気づいたのは「スタジアム内物価」の高さだ。
例えば、ビールだ。
アメリカのバドワイザーだけでなく、スペインやドイツ、イギリスなど各国の銘酒が売られていて、まるでパブといった感じだったが、価格は大サイズが13ドル、中サイズが9ドルだった。現在のレートである1ドル=約124円で換算すると、前者が1612円、後者でも1116円。日本なら最低でも400円は安いぞ……というケチな思いが消えず、もとい、取材で来ているという名目があるため買わなかったが、売り場には行列ができていた。
スタジアムでファンがお金を多く使えば使うほど、チームの収入が増えるのは当然のこと。そういえばこのスタジアムのチケット代も、最安値で約25ドルだった。
レッドブルズは昨年、チームを所有するレッドブル社がチームを売却するという報道があった。それだけに、スタジアム内で稼ぐ意識が強いのだろう。
実際のサッカーのレベルはと言うと……。
アメリカ人の商魂を見せつけられていたら、キックオフ時間が迫ってきた。いよいよ本題、MLSのサッカーレベルをチェックする使命に駆られる。
アウェーのユニホームに身を包んだピルロ、ランパード、ビジャ。そしてレッドブルズにも南アフリカW杯のイングランド代表だったショーン・ライト=フィリップスと、弟のブラッドリーがいる。名前だけを見れば、数年前のCLに出ていておかしくない選手がいるのだ。
さて、肝心の試合内容に触れると、両チームともビッグネーム以外の技術や戦術面はJリーグの方が断然上に映った。
最終ラインからのビルドアップのパスがアバウトで、簡単にインターセプトされてしまう。また前からのプレスに対して、いなすバックパスを使わずに慌てて蹴り出す。他にもピルロが最終ライン裏に出した必殺のロングパスにも、サイドハーフが全く対応できずにタッチラインを割ってしまう。
ただ、選手個々の身体能力は高く、なおかつ攻守の切り替えの意識も緩い分だけ「縦に速い」攻撃が頻発する。サイドからのクロスに対してアタッカーが飛び込み、そのこぼれ球に迷いなくミドルシュートを打つダイナミックさは、同じ英語圏のプレミアリーグにも共通するものではある。
単純明快ながら、ゴール前での攻防が多く生まれる試合展開。自ずと観客のボルテージは上がっていく。