スポーツ百珍BACK NUMBER
アメリカサッカーはほとんどWWEだ!
DJはミスを煽り、ピルロは老人扱い!?
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byAFLO
posted2015/08/25 10:40
アンドレア・ピルロ対カカ、こんなマッチアップが見られるMLS。わかりやすいビッグネームにわかりやすい煽り、アメリカで流行るためには、サッカーも変化をするのだ。
DJが相手チームのミスを盛大に煽り、ベテランを揶揄。
そして、ピッチ外でのボルテージの上げ方も、実にアメリカらしかった。
その象徴がスタジアムDJだ。試合前、両チームの練習中から「NYで歴史のあるクラブは我々レッドブルズだ!」と焚きつけていく。これならまだ可愛い方だが、レッドブルズが先制点を取った場面でのこと。右からのクロスをシティFCのディフェンダーがクリアし損ねた結果、ブラッドリーが合わせて得点を奪う、レッドブルズにとってはタナボタのような得点だった。そのシーンをDJは大音量でこう叫ぶ。
「New York City's awful Error!!!!」
ヒドいニューヨーク・シティのミスだぜ!
いや、日本人のメンタル的にヒドいと思うのは、あなたの煽り方なんだが……。
そういえば、試合前も少々やりすぎだった。
両チームの選手が入場してくると、レッドブルズのサポーターが大きな横断幕を掲げた。
「CITY RETIREMENT HOME」
その下に描かれたのは、杖をつき、腰が曲がった姿のランパードとピルロ。言うまでもなく、これはトウが立ったベテラン選手の加入を揶揄したもの。
Jリーグだけでなく、同じことをヨーロッパでやったらたぶん大問題になるだろう。さすがにこの煽りはオーバー過ぎたようで、試合後はシティFCサポーターとレッドブルズサポーターの衝突を避けるため、警察が出動する騒ぎになってしまった。
プロレスのWWEにも通ずる、分かりやすい演出。
この横断幕に限らず試合中も、スタジアムの煽りに呼応して沸くレッドブルズファンと、大声を上げて対抗するアウェーのシティFCファンという構図があった。これを見ていて、思いついたものがあった。
プロレスのWWEだ。
ストーリーを強調することで、エンターテインメント性を強く押し出していくWWEのような演出は、分かりやすくてノリやすいのは確か。サッカーとの相性がいいかは別にして、盛り上がるには一番手っ取り早い。その手法が多くのアメリカ人にとって心地よいのなら、MLSにとっても正しい方向性なのだろう。