野球善哉BACK NUMBER
健大高崎の「機動破壊」今年も健在。
ただの盗塁ではない、状況判断の力。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2015/08/10 16:00
7回表、健大高崎1死一塁の時に宮本隆寛が二盗を仕掛けた。結局、今大会で寒川を含む四国勢は初戦ですべて敗退することに
「機動破壊」のさらに先にある能力とは?
2番・林賢弥の送りバントと3番・相馬優人の四球で満塁とすると、4番・柴引良介の右翼線適時二塁打で2点を追加。5番・柘植世那の右翼前安打でさらに2点。宮本隆寛が繋いで、チャンスを拡大。その後のスクイズこそ失敗に終わるも、2死一、三塁から小谷と宮本でダブルスチール(本盗)を成功させる。さらに失策も絡んで、この3回表に8点を奪い、試合の大勢を決めたのだ。
ディレードスチールやダブルスチールなど足攻があったからこそ、確かに「機動破壊」を印象付けることとなったが、これほど冷静な判断でゲームを進めることができる彼らをみて、「機動破壊」のさらに奥にある、すば抜けて高い判断力について考えざるを得なかった。
部長を務める生方啓介はいう。
「走塁の練習はやりますけど、それ以前に『状況判断』をしっかりできるかどうかが大事であると。それは守備においても、走塁においても共通していますから。選手たちもそれを意識していると思います。たくさんの練習試合もしてきましたし、多くの実戦を経たチームなので、状況判断はしっかりできていると思います」
「相手のどこに隙があるか常に観察しています」
生方部長によれば、今年のチームは二遊間を中心に守備能力が高く、できるプレーが多彩とのこと。そこから、守備と走塁を表裏一体にしたチーム作りもできている印象があるという。
そのことは、遊撃手・林の言葉からもうかがい知ることができる。
「常に練習では、自分たち(と同レベル)のチームが走塁をしていると想定しながら守っています。試合でも、相手のどこに隙があるか常に観察するようにしていますし」
林のプレーでうなったのは、7回裏1死から金川の遊撃ゴロが飛んだ時だ。やや三塁よりに転がったこの打球を、林は一度ハンブルする。慌ててミスをしかねない場面だったが、ここで林は丁寧なワンバウンドの送球をして、アウトにしたのだ。林が続ける。
「打球が深かったというのもありますし、あそこで慌てて暴投になることもあり得ると思って。低いボールを投げれば、一塁手が止めてくれるという信頼もありましたので、意識的に低い球を投げました」
この状況判断能力の高さこそ、今年の健大高崎の特徴ではないだろうか。