プレミアリーグの時間BACK NUMBER
プレミアの得点王に最も近い男は?
岡崎慎司はクラブ内では1番人気に。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2015/08/14 10:40
FWとしてキャリアをスタートしたが、二列目や時にはセントラルミッドフィルダーまでもこなす“万能”ルーニー。得点に専念する今季はどれだけのゴールを生むことができるか。
トッテナムの新星ハリー・ケインは評価が真っ二つ。
識者からファンまで、予想が真っ二つに分かれているのがトッテナムのハリー・ケインだ。チームの得点源に成長した昨季、得点王ランク2位の21ゴールを決めた22歳について、「更なる成長で30点台に近付く」という意見もあれば「2年目の壁で10点未満に終わる」との意見もある。ストライカーとしての評価からして、「得点パターンが豊富」と誉められる一方で、「傑出した要素を持たない」と貶されてもいる。
ちなみに筆者はケイン肯定派の1人。たしかに「快足」とまでは言えないが、裏のスペースを狙えるだけのスピードを持っており、シュートの精度もヘディングを含めて申し分ない。とはいえ、得点王の有力候補に推すつもりはない。無から有を生めるタイプではなく、チャンス供給を必要とするゴールゲッターにとっては、受けられるサポートの手厚さでアグエロやジエゴには見劣りする。
トッテナムが開幕前に注力した補強は守備面の梃入れ。頼れるチャンスメイカーは、相変わらずクリスティアン・エリクセンしかいない。
得点数アップの可能性では、アーセナルで1トップを務めるオリビエ・ジルーの方が高い。充実のチーム2列目はアレクシス・サンチェスの合流前だったプレシーズン中から好調。特に、アーセン・ベンゲル監督が攻撃の「中枢」と心を決めた感のあるメスト・エジルに本領発揮が期待できる。ジルーは昨季14得点で、難しいチャンスを物にする代わりに決定的なチャンスを逃す癖はあるが、ケインと同等の平均15倍という倍率は決して過度の期待ではない。
リバプールのベンテケには重圧がかかる。
同レベルのオッズでダークホース視されている1人にクリスティアン・ベンテケがいる。今夏のプレシーズン戦で、リバプールでのデビューに華を添えたボレーのインパクトは強烈だったようだ。元々、ベルギーからやって来た3年前にアストンビラで19得点を上げた実積はある。フィリペ・コウチーニョや、新戦力のロベルト・フィルミノもいる新任地には、古巣とは段違いに良いサポート環境もある。
問題は、その環境変化に伴うプレッシャーに本人が耐えられるかどうか。プレッシャーのレベルは、近年のリバプール新FWの中でも最大級だ。2007年のフェルナンド・トーレスは大物として入団したが、当時のチームはトップ4復帰という死活問題など抱えていなかった。'11年移籍のルイス・スアレスは後半戦からの加入で、移籍金も約3300万ポンド(約63億円)のベンテケより1000万ポンドほど安かった。昨夏のマリオ・バロテッリは獲得自体が「賭け」と見られていた。そういう意味でも、ベンテケの双肩に掛る重責は絶大だ。