サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
東アジア杯で「結果」を追う無意味さ。
テストに徹せず、韓国と空しいドロー。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byTakuya Sugiyama
posted2015/08/06 11:20
意図する速攻が機能せず、苛立ちを見せるヴァイッド・ハリルホジッチ監督。東アジア杯優勝は消えたが、最終戦では確かな進歩の跡が見たい。
この試合でリアリストであることは必要だったか?
どのようにゲームをコントロールするのかについては、ハリルホジッチ監督からも「選手たちで判断していい」という指示が出ていた。試合後の記者会見でマイクに向かった指揮官は、「我々はある程度リアリストになる必要があった。そうでなければ結果は出なかったでしょう」と話している。たった1度の決定機で引き分けに持ち込んだのだから、現実的な戦いだったのは間違いない。
しかし、大きな疑問がある。
そもそも、リアリストになる必要があったのだろうか。ハリルホジッチ監督は、東アジアカップに何を求めているのだろうか。
新戦力のテストなのか。結果重視なのか。
テストなのか結果重視なのかが曖昧だった采配。
新戦力のテストなら、ターンオーバーでいい。2005年大会のジーコや前回大会のザッケローニのように、1試合目と2試合目でスタメンを総入れ替えしてもよかった。
そうした選手起用から、ジーコは巻誠一郎を見出した。ザッケローニは柿谷曜一朗や山口蛍に手ごたえをつかみ、並行して青山敏弘、大迫勇也、齋藤学らにも注目していくようになる。
北朝鮮戦から韓国戦のスタメン変更は、5人だけだった。西川周作、槙野智章、森重真人、山口蛍、永井謙佑、遠藤航の6人が、中2日で連続出場している。
しかし彼らのプレーをもう一度チェックしたいなら、中国戦で起用するべきだったのではないだろうか。中6日で送り込めば、心身ともによりフレッシュな状態で臨める。
結果的に韓国戦のキャスティングは、テストなのか結果重視なのかが、ひどく曖昧なものになった。交代選手の投入も70分以降に集中し、3人目の川又堅碁は88分に投入されている。攻撃の活性化には遅く、テストには時間が短い。64分に2人同時に交代し、79分に3枚目のカードを切ったシュティーリケに比べると、采配の意図が分かりにくい。
東アジア選手権と呼ばれていた当時を含め、今回は6度目の大会となる。前回大会の優勝は印象深いが、それ以前の結果をどれほどの人が覚えているだろうか。改めて調べなければ思い出せないという人が、大多数を占めるだろう。