松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER

ウッズが作った“聖地の定説”を一蹴。
松山英樹、全英は「バンカーが……」。 

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舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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posted2015/07/16 11:30

ウッズが作った“聖地の定説”を一蹴。松山英樹、全英は「バンカーが……」。<Number Web> photograph by AFLO

練習ラウンドを笑顔で回っていた松山英樹だが、バンカーでは一転して真剣な表情で何度も脱出を試みた。自分で見つけた警戒ポイントこそが、彼のゴルフを支えている。

聖地を訪れるのは、実は初めてではない。

 前週の金曜日に現地入りして練習ラウンドを重ねてきた松山だが、彼がセント・アンドリュースに足を踏み入れたのは実は今回が初めてではない。聖地への興味と関心が彼を駆り立てたのだろう。2年前、初出場した全英オープンの開幕前にセント・アンドリュースに立ち寄った経験がある。

「1番、2番、17番、18番は(聖地らしい)雰囲気がすごくある」と感じるものはあった。だがたとえそれがセント・アンドリュースだとしても、直に見て「1回、回ってしまえば憧れはなくなる」。センチメンタルな言葉の一つも口にせず、クールに見える。だが、彼は自分が抱いたクエスチョンマークを「?」のままにするのが嫌で、定かではないことは自分で確認するという作業を行なっているだけ。そうやって「?」を解き明かしていく作業こそが、彼が試合に挑む際の姿勢につながっている。

ウッズが作った多くの「定説」も疑ってかかる。

 セント・アンドリュースで開かれる全英オープンと言えば、真っ先に話題になるのはタイガー・ウッズだ。2000年大会で2位に8打差をつけて圧勝し、キャリア・グランドスラムを達成すると、続く2005年大会も2位に5打差で勝利したウッズは、聖地攻略のための定説めいたものをいくつも生み出している。

 その1つ。「セント・アンドリュースは右サイドにトラブルが多いから、エイム・レフト(左狙い)」だ。だが、松山はそんな定説にとらわれてはいない。

「丸山(茂樹)さんもそう言ってたけど、関係ないんじゃないかなって話をしてました」

 ウッズは「隣のホールをあえて狙うのがベストルートになることもある」と言う。だが、松山は「隣のホールを(あえて)使うことはない」と、きっぱり。

 今年は降雨続きで「フェアウェイが柔らかい。転がしが有効かどうか。いつもとは異なるセント・アンドリュースになりそうだ」と、ウッズは開幕前から何度も強調している。だが、松山は「柔らかいと思うし、(ボールが)止まる感じはあるけど、打ってみると意外と固い」と自分の感触だけを信じる。

 晴れたり曇ったり、突然大雨が降り出したり。そんな目まぐるしい天候の変化も「そういうものだと思ってやっている」。

 2年前の初ラウンドのときには無かったギャラリースタンドが、当たり前だが今はある。それが緊張や意気込みにつながるかと問われれば、「打っていく方向がわかりやすいので助かっている」。

 与えられた環境に対して不平不満を口にすることは絶対にない。与えられた情報や定説に惑わされることもない。自分の目で見て、体で感じて、頭で納得したことだけが全財産。それが、松山の戦いに対する備え方だ。その姿勢は、レギュラー大会でもメジャー大会でも、変わることはない。

【次ページ】 「バンカーに入れたらいけないという感じ」

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