松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
ウッズが作った“聖地の定説”を一蹴。
松山英樹、全英は「バンカーが……」。
posted2015/07/16 11:30
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
AFLO
全英オープン取材に向かうため、スコットランドのエジンバラ空港からセント・アンドリュースを目指して走ったタクシーの車内。人懐っこい運転手が、しきりに話しかけてきた。「ジ・オープンに来たんだろ?」
英国の人々は「全英オープン」と言う代わりに「ジ・オープン(The Open)」と呼ぶ。観戦ではなく取材のために来たメディアなのだと説明すると「アナタは韓国人? 中国人?」
私は日本人だと答えると、運転手は目を丸くしながら「えっ、ジャパニーズ・プレーヤーもジ・オープンに出るのかい?」。今度はこっちの目が丸くなり、「えっ、出る出る。日本人は8人も出る」と言い返すと、「そんなこと知るわけないよ。だって、僕はポーランド人だけど、ポーランド人選手が出るかどうかは、キミだって知らないでしょ?」
なるほど。それは一理あるなと頷かされた。日本人だから日本人選手のことを意識しているが、世界から見れば、日本は数多くの国々の中のワン・オブ・ゼムに過ぎない。運転手いわく「エジンバラはジ・オープンで盛り上がっているけど、僕は日本人選手は一人も知らないよ」。
「マツヤーマ」は知っている。国籍は知らない。
だが、試しに「ヒデキ・マツヤマって聞いたことある?」と問いかけると、運転手は「おー、マツヤーマ! 知ってる知ってる。ベリーグッド・プレーヤーだよね。彼はジャグを取るかもしれないよね」。ジャグとは、全英覇者に贈られる優勝トロフィー、クラレットジャグのことだ。運転手が勝利を期待する「マツヤーマ」がジャパニーズであることを説明すると、「えっ、ホントに?」と驚くばかり。
我々日本人やゴルフ通から見れば、松山は当然のごとく「日本の松山英樹」。だが、広い世界の小さな街角から見れば、松山がどこの国の選手なのかは案外、認識されていない。
けれど、国籍は定かでなくとも、「ヒデキ・マツヤマ」というグッドプレーヤーの存在は知っている。そう、松山は日本のみならず、世界の小さな街角からも全英優勝を期待される選手になりつつある。