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ホンダが前代未聞“25グリッド降格”。
難解すぎるルールの解決を望む。
posted2015/06/28 10:40
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
第8戦オーストリアGPで、マクラーレン・ホンダの2台がそろって前代未聞の25グリッド降格というペナルティを受けた。
その理由はパワーユニットの交換によるものである。
現在のF1のパワーユニットは、内燃機関、ターボチャージャー、MGU-H、MGU-K、コントロールエレクトロニクス、エナジーストアの6つのコンポーネントで構成されている。
年間に使用できるパワーユニット数はレギュレーションで定められており、今季の場合それぞれのコンポーネントにつき4基までは交換が認められている。
それを超えて交換の必要が出てくると、5基目以降は最初の投入の際にそれぞれ10グリッド降格、さらに他のコンポーネントを交換するたび5グリッド降格のペナルティが与えられる。
オーストリアGPのジェンソン・バトンは、6基目のターボチャージャーとMGU-Hで15グリッド、5基目の内燃機関とMGU-Kで10グリッド、合わせて25グリッドの降格となった。
最下位スタート&10秒ストップ・アンド・ゴー。
しかし、ペナルティはそれでは終わらなかった。
なぜなら、F1のグリッドは全部で20しかなく、しかもバトンは予選17番手のため、25グリッド降格を消化できないからだ。
それを見越して、レギュレーションにはタイムペナルティが用意されている。
ケース(1) 未消化グリッド数が1~5の場合は、5秒加算ペナルティ
ケース(2) 未消化グリッド数が6~10の場合は、10秒加算ペナルティ
ケース(3) 未消化グリッド数が11~20 の場合は、ドライブスルーペナルティ
ケース(4) 未消化グリッド数が21以上の場合は、10秒ストップ・アンド・ゴー・ペナルティ
予選を17番手で終えていたバトンは25番手降格のうち3つしか消化できない計算となるため、ケース(4)が適用されて最後尾からスタートした上、レース中に10秒ストップ・アンド・ゴー・ペナルティが科せられたのである。
しかし、土曜日の予選で17位だったバトンがなぜ最後尾からスタートし、なぜレース序盤にストップ・アンド・ゴーをしたのかを、レース前に理解していた観客はほとんどいなかったのではないだろうか。