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室伏広治の20連覇という偉業に思う。
肉体への理解度と、尽きない探究心。
 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byAFLO

posted2015/06/22 10:40

室伏広治の20連覇という偉業に思う。肉体への理解度と、尽きない探究心。<Number Web> photograph by AFLO

現在40歳、室伏広治が打ち立てたV20という記録が破られることはおそらく未来永劫ないであろう。日本選手権欠場という偉大なアスリートの節目は、後進の奮起のきっかけとなるか。

ハンマー投げ、そして肉体への理解度の深さ。

 そこにうかがえるのは、ハンマー投げという競技への、そして肉体の鍛錬への理解度の深さだ。だからこそ一見ユニークなトレーニング法も取り入れ、役立てることができた。

 探究心の強さもまた、室伏の特徴と言えるだろう。自分の肉体を、パフォーマンスをとことん自己分析した上で、自分に何が必要なのかを常識にとらわれず、とことん探し求めてきたからこそ行き着いたトレーニング方法だ。

 その域に達するのは、トップアスリートであっても、容易ではない。

 その強い探究心は同時に、衰えることのない気力の存在をも示している。昨年の日本選手権後に室伏はこう話している。

「オリンピックや世界選手権で勝つことは難しいですが、体調を維持しながら長くやることも素晴らしいと思います」

 室伏が語るからこその実感がそこにはある。

「20連覇を達成し、その役割は果たした」

 では20連覇という金字塔のあと、今回欠場を決めた理由はどこにあったのか。

 室伏は、日本陸上競技連盟を通じてコメントを出している。

「後輩たちに大きく伸びてもらいたいという想いから、自らがジャンプ台の役割になれればと日本選手権に出場してきましたが、昨年20連覇を達成し、その役割は果たしたと思っております。1992年から出場してきましたが、いつまでも自分が出場し続ける事によって後輩が育たないとも感じています」

 また、調整面もあったかもしれない。2013年に室伏はこう語っていた。

「(20連覇を目指したあとは)半年ごとに様子を見ます」

 記録に終止符は打たれたが、現役から退いたわけではない。コメントの続きにはこう記されている。

「しかしながら、後に続く若い選手が出てこなければ、いつでも日本選手権に出場したいと思っています。世界で戦える、若い選手が育つことを望んでいます。リオデジャネイロオリンピックに向けての考え方は、2016年が明けてから示したいと考えております」

 含みを残す言葉に、もう一度、という思いに駆られる。

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