錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
錦織効果で日本人選手が急成長中!
全仏出場5人という偉業の背景とは?
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2015/05/29 11:40
昨年のデビスカップにて。伊藤竜馬、錦織圭、植田実監督、内山靖崇、ダニエル太郎。錦織に牽引されるように、みな実力を上げている。
「早く本戦で戦える選手になってほしい」
西岡は、1回戦で第4シードのトマーシュ・ベルディヒに敗れたのだが、第1セット0-6とまったく歯がたたず、「すごく緊張して、雰囲気に呑まれてしまった」と振り返った。しかし第2セットからは食い下がり、結局ストレート負けではあった。しかし、「圭君と練習することも多かったので、(第2セットからは)その経験が生きたかなと思います」と語ってもいる。
世界トップ5のショットとはどういうものなのか――錦織との練習でそれを経験していなければ、「相手のボールや雰囲気に呑まれていた」時間は、第1セットだけでなくもっと長引いていたのではないだろうか。
錦織の叱咤激励は続く。
「クレーで予選を勝ち上がってくるというのは大したもの」と評価しながらも、「予選と本戦ではまだ差があると思うので、早く本戦で戦える選手になってほしい」と。
この西岡を含め、錦織以外の4人は全員1回戦で敗れた。出るだけではなく勝ち進むことが次のステップである。そのステップに行くために、錦織は「若いうちに高いレベルのテニスに慣れておくこと」が大切だと言っていたのだ。
「錦織特需」の間に後継者育成をするのが急務!
錦織は西岡よりもさらに若い世代にも種を播いている。
若い選手たちにとって、錦織が「雲の上の存在」であることは間違いないが、同時に、食事をともにしたり、練習をさせてもらったりと、身近な存在でもある。今、IMGアカデミーでテニス留学中の〈盛田ファミリー〉のジュニアは、フロリダにある錦織の家にも遊びに行かせてもらうと話していた。
「あんな家を僕も建てたいです」と言ったが、それもまた1つのモチベーションだろう。錦織がいなければ、彼はトッププレーヤーの豊かな生活を体感する機会はきっとなかったはずだ。
ところで、こういうブームは、その中心となった人物が牽引役を降りた途端にフェイドアウトしていくのが常だ。後継者育成に与えられている時間は限られている。その間に、智恵を絞り、汗をかくのが、錦織効果……もっと嫌らしい言い方をすれば〈錦織特需〉に浴した人々の責任であるに違いない。