錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
錦織効果で日本人選手が急成長中!
全仏出場5人という偉業の背景とは?
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2015/05/29 11:40
昨年のデビスカップにて。伊藤竜馬、錦織圭、植田実監督、内山靖崇、ダニエル太郎。錦織に牽引されるように、みな実力を上げている。
日本女子、ロシア、中国がこれまでブームになった。
テニスにはこれまで、1カ国から大勢のプレーヤーがやって来る「○○旋風」と呼ばれる現象が何度か起こっている。
'90年代の日本女子はまさにそれだった。伊達公子を筆頭に、'95年全豪オープンでは日本史上最多の11人の女子が本戦入りした。2000年以降はマリア・シャラポワらのロシア旋風が起こり、'04年はグランドスラムのうち3大会でロシア人がチャンピオンになった。
2010年代になると、中国旋風だ。
2つのグランドスラムと最高ランク2位を勲章に昨年引退した李娜を先鋒とし、ダブルスでも中国人ペアがグランドスラム優勝を複数回果たした。
全てのケースの共通点は、ヒーロー&ヒロインの存在があるということだ。
同じ国の選手が成功することで、雲の上だった世界がグッと近づき、モチベーションが上がる。これらと横並びに今の日本男子を語るのはオーバーかもしれないが、錦織がアジア選手として歴史的な快挙を成し遂げているのと同じ時代に、こうして日本男子全体が新たな歴史を作っていることは偶然であるはずがない。
「力はあると思うんですけど、もっと経験が必要」
以前、錦織に他の日本選手のポテンシャルについて聞くと、少々厳しい、こんな答えが返ってきた。
「力はあると思うんですけど、みんな、もっともっと経験が必要。結果が出なくても経験することが必要だと思います。いいサンプルとしてはヨッシー……西岡君。果敢にATPにチャレンジしているという意味で。チャレンジャー大会にばかり出ていると、チャレンジャーのテニスになってしまう。早めに上の大会に出ていかないと、あとで難しいかなと思います」
成功者の言葉は説得力がある。そのとき名指ししたのが、今回予選突破した西岡だ。
錦織と同じ〈盛田正明テニスファンド〉で14歳からフロリダのIMGアカデミーにテニス留学し、プロになった今もそこを拠点にしている。その弟分の挑戦心と活躍は、日本テニスのリーダーとしての自覚も高まってきた錦織を喜ばせている。