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プレミアを去るアイコン、ジェラード。
彼がトロフィーの代わりに得たもの。 

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田邊雅之

田邊雅之Masayuki Tanabe

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photograph byGetty Images

posted2015/05/29 10:50

プレミアを去るアイコン、ジェラード。彼がトロフィーの代わりに得たもの。<Number Web> photograph by Getty Images

来季からはかつてベッカムも所属したロサンゼルス・ギャラクシーでプレーすることになるジェラード。

一方でジェラードが体現していた、人生の無情。

 とはいえ、ジェラードを華やかなイメージだけで捉えるのは適切さを欠く。

 たしかに彼はプレミア屈指のスターであり、20世紀末から約10年間、世界の注目を集め続けた「黄金世代」の一人でもあった。

 だが同時代を共に生きたデイビッド・ベッカムなどと比べれば、両者が放っていた輝きの本質的な違いが明らかになる。

 たとえばベッカムが体現していたものが、サッカー界に訪れた我が世の春――ショービズ的なスポットライトの眩さだとするなら、ジェラードが引きずっていたのは一種の挫折感であり、夢が叶いそうで叶わぬ人生の無情だった。

 そのような役回りを象徴するのが、プレミアのトロフィーに最後まで手が届かなかったという残酷な事実だ。とりわけ昨シーズンなどは、天王山と目されたチェルシー戦で失態を演じ、優勝の可能性を自ら遠ざけてしまっている。ピッチに足を取られて相手に先制点を献上したのは、よりによって深紅に染まったアンフィールドだった。

親近感の持てる庶民派のヒーローであり続けた。

 むろん「黄金世代」の面々は、イングランド代表では同じように失望を味わっている。'66年のW杯イングランド大会以来、サッカー界で最も価値あるトロフィーを母国に持ち帰ることはできなかったし、EURO2008では本大会にさえ出場できなかった。ジェラードの場合は、国内のリーグ戦のタイトルとも無縁だっただけに、なおさら悲運な印象が強い。

 しかしそれが故にこそ、ジェラードはベッカムよりも多くの人々からシンパシーを集めた。コラムニストのサイモン・クーパーが書いているように、ベッカムは世間からやっかまれて酷評された時期もあるが、ジェラードに関するネガティブな人物評が掲載されたケースはほとんどない。ヴィクトリア・ベッカム以上に美しい妻を娶り、自宅の敷地内に会員制のスポーツジムのごとき施設を建てるという、馬鹿げた金の使い方をしたとしてもである。

 彼はメディアにとってもファンにとっても、親近感の持てる庶民派のヒーローであり続けた。

【次ページ】 彼がかくも愛された理由とは?

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#スティーブン・ジェラード
#デイビッド・ベッカム

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