オフサイド・トリップBACK NUMBER
プレミアを去るアイコン、ジェラード。
彼がトロフィーの代わりに得たもの。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byGetty Images
posted2015/05/29 10:50
来季からはかつてベッカムも所属したロサンゼルス・ギャラクシーでプレーすることになるジェラード。
そんな彼が堰を切ったように話し始めた場面。
こちらは取り立てて難しい質問をしたわけではない。そもそも両監督の手腕の違いを最初に指摘したのは、ジェラード本人だったはずだ。しかし彼は眉をひそめ、さかんに「難しいことを聞いてくるなあ」と繰り返した。後から人づてに聞いたところによれば、ジェラードはインタビューが終了した後、「まさか日本のジャーナリストに、あそこまで専門的なことを聞かれるとは思っていなかった」とこぼしていたという。
ただし、そんなジェラードが表情を変え、堰を切ったように話し始めた場面があった。話題が自分のプレースタイル、そしてイングランドのフットボールに及んだときだ。
――現役のMFで参考にしている選手はいますか?
「まずはジダン。個人的に大ファンだし、彼のプレーはいつもチェックしているんだ。ロナウジーニョもかなり好きだよ。とにかくヨーロッパ(大陸側)でプレーしている一流の選手を見るのは好きなんだ。特にMFはね」
――でもですよ、選手としての能力や特徴を考えた場合、あなた自身には大陸型のサッカーよりも、伝統的なイングランド式のフットボールの方が向いているとは思いませんか?
「それはすごく思う。ロングパスからダイレクトに攻撃を仕掛けていったり、ゴールをどんどん爆撃していく。俺はそういうプレースタイルが得意な、典型的なイングランドのフットボーラーだと思うし、自分でも目指してきたからね。日本の人もスピーディーでダイレクトな展開は好きなはずだから、ファンが増えてくれるといいんだけど」
――迫力やスピード感には凄まじいものがありますもんね。最近、プレミアの試合を初めて見た女性の友人は、日本のサッカーと同じスポーツだとは思えないとしきりに驚いてました。
「(ぐっと身を乗り出して)だろう! その気持ちはすごくよくわかる。俺自身、フットボールの試合を見るのは大好きで、暇さえあればテレビで中継を眺めているけど、やっぱりイングランドのゲームを一番多く見るもんな。“男らしく”がんがん攻めていくスタイルは大好きだし、ゲームのペースが上がれば上がるほど、見ている側は興奮させられるんじゃないかな」
――なるほど。あなた自身が、イングランドフットボールの大ファンだと?
「ああ。その点は断言できるよ。世界で一番熱狂的なファンかどうかはわからないけど(笑)」