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ホンダが目指す究極のF1マシン。
「サイズ・ゼロ」コンセプトとは?
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2015/04/30 16:00
「まだ僕らはレースをテストと想定して取り組んでいる段階だ」とコメントしていたアロンソ。シーズン後半には、コンスタントにポイントが取れる予定だという。
誰の真似もせず、世界一を目指すためには?
ただ無難にマシンを走らせるためだけだったら、ほかのエンジンメーカーと似たような仕様でパワーユニットを設計することもできた。しかし、それではライバルたちに近づくことはできても、追い抜くことはできない。
しかも、現在のパワーユニットに関するレギュレーションは、一度パワーユニットをホモロゲーション(認証)してしまうと、シーズン中の開発はほとんどできない仕組みになっている。
果たして、マクラーレン・ホンダが選んだ道は、世界一高い山へと続くもの。つまり、「サイズ・ゼロ」だった。
あまりにも画期的なゆえに、開発が困難であること。
「サイズ・ゼロ」を実現するためには、ホンダのパワーユニットも、これまで採用されたことがないほど先鋭的な発想で開発されなければならない。
「そこで、ホンダの技術陣がたどり着いた答えが、通常エンジンの外にレイアウトされるコンプレッサーを、エンジンのVバンク内に収めることだったのではないか」とメドランドは解説する。
昨年のチャンピオンであり、今シーズンもここまで選手権をリードしているメルセデスのマシンは、通常エンジンの後方にあるコンプレッサーをターボから切り離してエンジンの前方へレイアウトするという画期的なものだった。これにより、エンジンのリア部分がコンパクトになっただけでなく、高熱となるターボ主要部からコンプレッサーを離すことで冷却効率も上がり、そのことでさらにマシン全体をコンパクトにできたという。
もし、ホンダが本当にコンプレッサーをVバンク角の中に収めることに成功していたとしたら――確かにそれまでだれも目指したことがない新しい挑戦である。
そして、そこまでオリジナリティがある目標なのだとしたら、ウインターテストから、ホンダが苦労している状況も十分うなずける。