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<J助っ人外国人から日本への提言> ドゥンガ 「スペイン型は×。敏捷性を活かせ」
posted2015/05/02 10:00
text by
藤原清美Kiyomi Fujiwara
photograph by
Kazuaki Nishiyama
日本サッカーをつぶさに観察した5人の先達。
岐路に立つ今こそ胸に響く、その熱きエール。
Number874号「創刊35周年特集号 日本サッカーへの提言。」より、
磐田黄金時代の礎を築いたドゥンガからのメッセージを全文公開します!
一時期、日本人からよく「スペインサッカーが日本のお手本になる」という話を聞いた。もちろん、何らかのモデルをコピーすることも必要だと思う。スペインやイタリア、ブラジルなどね。ただ、スペインのようにプレーするのは難しいよ。あのパスワークを維持するには、短いパスをミスしてはいけないから、ものすごい集中力が必要になるんだ。ロングパスのミスはまだカバーしやすいが、短いパスのミスはカウンターアタックを食らう。立て直す時間も、スペースを埋める時間もない。
日本はスペインよりもっとスピードがあるから、それを活かさないと。日本人選手の特徴である、敏捷性を活かしたプレースタイルであるべきだ。そして、接触プレーを最小限にすること。相手が来るより、先に動くことだ。日本人にはそれを可能にするスピードが備わっている。
日本は継続して“次の世代”が育っていると思う。
僕がジュビロ磐田に入団した'95年から、日本が初めてW杯に出場した'98年までの3年間を見ても、日本サッカーはすごく成長したと思うよ。僕が最初に見たのは、まだ経験の浅い、あまり狡猾さのないサッカーだった。選手たちは技術力に長けているし、スピードもある。今でもそれは日本人の長所だし、現代サッカーでは、すごく必要とされることだ。でも、同時に少し素直過ぎた。そこから彼らは猛スピードで学んでいったんだ。Jリーグ初期、直前のアメリカW杯でプレーした外国人が何人もプレーしていたから、それがクオリティの高いお手本になった。そして初めてW杯大陸予選を突破したフランス大会を皮切りに、5大会連続でW杯に出場した。
大半の国では「良い選手たちが揃った世代」というのがあるものだ。そして、その世代が旬を過ぎた時に、次の世代が育っていないことも多い。でも、日本は継続している。ひとつの世代が終わっても、すぐ次の世代が育っていて、前の世代よりも良かったりするほどだ。