セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
PK“6連続セーブ”に“阻止率83%”。
インテルの異能GK、ハンダノビッチ。
posted2015/04/29 11:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
AFLO
インテルのGKサミール・ハンダノビッチに、PKの常識は通用しない。
今季インテルが与えた6本のPKのうち、守護神は5度までも、相手キッカーに「NO」を突き付けた。ハンダノビッチを相手にしたとき、PKが決まる確率は2割以下しかないのだ。
直近の犠牲者は、4月中旬のセリエA30節で止められたベローナFWトーニだ。今季も二桁ゴールをあげ再評価の声高いベテランFWも、前半戦のカードに続いて2本続けて失敗したとあっては、稀代のPKストッパーに白旗を上げるのみだった。
「ハンダノビッチには『ブラーヴォ』と言うしかないよ。キッカーのことをよく研究しているのがわかる。蹴る瞬間の最後の最後までハンダノビッチは動かないし、彼が跳べばゴール枠の中で届かないところはない。蹴る方向まで読まれたらお手上げだ」
今季のセリエAで、31節までに蹴られたPKは合計92本あり、そのうち成功したのは65本。決定率は70.7%だ。つまりPKというのは普通、10回蹴れば7回は成功する。
伊紙『ガゼッタ・デッロ・スポルト』が、今月21日時点でまとめたところによれば、今季の欧州5大リーグのPK成功率は7~8割で推移している。最も成功率が高いブンデスリーガでは、29節までに82.5%を記録した。
PK6連続セーブに、阻止率83%。
主審が笛を吹いてペナルティスポットを指せば、攻撃側のチームはかなりの高確率で1点取れる、というのがサッカー界の常識だ。ところが、インテルの守護神はこの常識を覆し、数字を逆転させてしまう。
昨季終盤のサンプドリア戦から昨秋のELドニエプル戦まで、“PKの6本連続セーブ”という離れ業を演じたハンダノビッチは、“PK阻止率83.4%”という化け物じみた数字をもって、冷たい視線のまま、ゴールマウスに立ちはだかるのだ。
'12年夏まで在籍したウディネーゼ時代から、ハンダノビッチはすでにPK阻止のスペシャリストだった。
23歳の若さでウディネーゼの正守護神になった'07-'08年シーズン、FWジョビンコ(当時エンポリ)とMFカカ(当時ミラン)によるPKを2本連続で止めたのを皮切りに、'10-'11年には6本を阻止して、セリエAのシーズンレコードも樹立した。翌シーズンにも7本中5本を止める鬼神ぶりを見せつけた。