Number ExBACK NUMBER
錦織圭が描く2015年の成長戦略を、
初の著書『頂点への道』から読み解く。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byMannys Photography of Tokyo
posted2015/04/21 11:20
昨年のバルセロナ・オープンがクレーコートでの初タイトルとなった錦織圭。世界ランキング4位となった今年は第1シードで同大会に臨む。
諸刃の剣だった「クレー仕様」の超攻撃的プレー。
その「クレー仕様」のプレーが最大限発揮されるとともに、一方で弱点も浮き彫りになったのが、マドリード大会だった。
バルセロナでは錦織と戦うことなく大会を去っていたナダル、フェレールと激突。準決勝でフェレールをフルセットの激戦の末に破ると、決勝戦ではナダルから第1セットを奪い、第2セット途中まで、過去に勝ったことがないナダルを圧倒した。
『頂点への道』でも、その手ごたえを回想している。
「もう信じられないプレーが連発。
すみません、自分で言いますけどこの日はすごかったです!
後で映像を見返すと、完璧なテニスができてる、と」
だが、マスターズ1000という大舞台での初優勝を目前にした、第2セットの4-2で、腰と臀部が悲鳴を上げる。動くことも困難になって第2セットを奪われると、第3セット途中で棄権という結果に終わったのだ。
ベースラインの内側にぐいぐいと侵入する、ひたすら攻撃的なプレーが、世界最高の守備力を持つクレーコート・キング、ナダルをも圧倒できることはわかった。その反面、肉体のすべてを使っての超攻撃的プレーを続けることの負荷もあらわになったのだ。
結局、2014年はこの怪我のためにローマ大会を欠場し、なんとか出場した全仏オープンも1回戦敗退に終わった。
昨年の経験をどう生かしてくるのか?
しかし、2015年の錦織は、当然昨年とは違う戦いを見せてくれるはずだ。
そもそも錦織は、天才性を奔放に発揮するというだけの選手ではない。常に「経験値」をたくわえ、ランキングを上げるごとに戦い方をアップデートし続ける成長戦略で、ここまで来た。
Number誌上で「錦織圭 グランドスラム制覇への道」を連載し、『頂点への道』でも共著者として解説部分を担当したジャーナリストの秋山英宏氏はこう語る。
「改めて彼が2010年からつづってきた記録を読み返すと、錦織が常に自分の内面との対話を欠かさない選手だということがよくわかります。それをこれだけきちんと文字にできるというのは、スポーツ選手では珍しいのではないでしょうか。
勝負の世界に生きる選手が、自身のプレーを分析してはっきり言葉にしてしまうことは、ライバルたちに弱点を見せることになるという考え方もあるでしょう。しかし、彼はそこを真摯に語ります。それは読者に伝えたいというのはもちろん、自分の内面との対話を確認しているところがあるように思います。それが、彼のよく言う経験値を重ねることにつながっている。私は彼の原稿を、そんなふうに読みました」
錦織なら、昨年同様の超攻撃的プレーをいかにクレーシーズン中を通して持続するかについて、策を練っているに違いない。
バルセロナ・オープンは第1シードとして迎えるが、ドローにはナダル、フェレールらが名を連ねている。今やライバルたちからもっともマークされる選手の1人となった錦織が、ヨーロッパシーズンでどんな戦いを見せてくれるだろうか。
これまであまり知られていなかった、この「頂点への苦闘」を、
本人がブログなどで書き留めてきた記録が一冊の本になりました。
錦織選手が克明に記したの戦いの詳細は、『頂点への道』でぜひお読みください。