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ハリルはなぜ森重真人を指名した?
代表キャプテンを巡る、歴史と個性。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2015/04/21 11:00
森重真人が代表でキャプテンマークを巻いたのは、ウズベキスタン戦が初めて。熱さと冷静さを併せ持つ森重は、確かにキャプテンに相応しいキャラクターだ。
代表でも「チームに中心になっていかないと」。
ブラジルW杯ではコートジボワール戦で先発の舞台に立ったものの、逆転負けを食らう悔しさを味わった。その後代表への思いをさらに強め、アギーレジャパンではただ一人全試合に先発出場している。代表でのキャリアを重ね、キャップ数も20試合を超えた。
代表のチームづくりから入るようになった今、FC東京でのスタンスに自然と近づいてきているのかもしれない。それこそチームのことが2、3と増えてきているのではないか、と。
そんな筆者の想像をぶつけると、彼はこう応じた。
「一番はレギュラーとしてやっていって、3年後(のW杯)までやり続けること。でもW杯予選も始まってくるし、ときにはチームの割合が大きくなっていくこともあると思う。チームの中心になっていくということでもあるので、中心になっていかないといけない、という自覚を持ってやっているつもりです」
代表でも中心でやっていくという自覚。
ハリルは森重のなかにあるキャプテンシーを見たからこそ、責任ある役割を与えたのであろう。確信を持って、そう思えた。
長谷部がキャプテン交代を申し出た意図を改めて思う。
ふと、ブラジルW杯を終えた最後の囲み取材で語った長谷部の言葉を思い出した。
2012年10月、フランス、ブラジルと戦った欧州遠征の際、彼はキャプテンを交代する打診をアルベルト・ザッケローニ監督に申し出ていたことを明らかにした。
「監督に、もう少し若い選手にキャプテンを任せたらどうですかって言ったんです。でも監督は代える気なんてまったくないようでした。逆に『今までいろんなところで監督をしてきたけど、本物のキャプテンはマルディーニと長谷部だけだ』と言ってくれたんです。(代えてほしいと)言ったことを後悔してしまったんですけどね」
これはザッケローニと長谷部の強い信頼関係を物語るエピソードではあるが、なぜ、長谷部はキャプテンの交代を申し出たのか。人一倍責任感の強い長谷部だけに、そこには深い意図があったはずだ。