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ハリルはなぜ森重真人を指名した?
代表キャプテンを巡る、歴史と個性。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2015/04/21 11:00
森重真人が代表でキャプテンマークを巻いたのは、ウズベキスタン戦が初めて。熱さと冷静さを併せ持つ森重は、確かにキャプテンに相応しいキャラクターだ。
「10のうち自分のことを9考えていた」
森重は現在、J1好調を維持するクラブでキャプテンを務めている。2013年からキャプテンマークを巻いて3年目で、リーダーとしてチームをけん引する立場だ。
FC東京でのキャプテン就任が、彼のターニングポイントの一つでもあった。
「キャプテンになる以前はほとんど自分のことしか考えていなくて、10のうち自分のことを9考えるとしたら、チームのことは1ぐらい。(キャプテンになって)自分のことを9のままにしながら、チームのことを2、3、4と増やしていくような感覚でした。今はもうそんな割合のことなんて考えないけど、(当初は)自分のことをおろそかにしないで、ちょっとずつチームのことを考えていこうと。無理に上げようとしてしまうと、どうしても自分のことがおろそかになってしまうと思ったので」
自分のプレーに責任を持ったうえで、チーム全体を考える割合を徐々に引き上げていった。トータルを「10」から、「12」「13」と増やしていく。周りが見えるからこそ、また違う自分も見えてくるというもの。2013年7月の東アジアカップ以降、代表に定着していったのも、FC東京のキャプテンとして自分のキャパシティー全体を広げたことが、結果的にプレーヤーとしての成長を促した形となった。
代表でレギュラー獲りを目指す時、意識は個人に集中した。
1年前のこと。
ブラジルW杯のメンバー発表前にインタビューした際、彼は言っていた。
「センターバックの2人(吉田、今野)からポジションを奪いたいというその気持ちだけ」
「僕の目標の立て方として、W杯という目標の手前にレギュラー獲りという目標がある。そういったものにまず向かっていきたいというのが、正直なところです」
無風に近かったセンターバックのポジション争いに風穴を開け、レギュラー獲りに意欲を燃やしていた時期。代表では、自分を高めていくことがすなわちチームに対する貢献につながるというスタンスであったように思う。それこそ個人の「9」のほうに全神経を注がなければならなかった。