サムライブルーの原材料BACK NUMBER
ハリルはなぜ森重真人を指名した?
代表キャプテンを巡る、歴史と個性。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2015/04/21 11:00
森重真人が代表でキャプテンマークを巻いたのは、ウズベキスタン戦が初めて。熱さと冷静さを併せ持つ森重は、確かにキャプテンに相応しいキャラクターだ。
潜在的なキャプテンシーが、経験によって花開く。
'10年の南アフリカW杯直前に中澤に代わってゲームキャプテンを務めるようになった長谷部が、のちに「名キャプテン」になっていくことを、あのタイミングで、一体どれほどの人が期待していたか。
彼の潜在的なキャプテンシーは、実際にキャプテンを任されることによって引き出され、その立場が長谷部を人間として、プレーヤーとして成長させた。その事実を身を持って経験してきたからこそ、敢えて次の世代にバトンタッチしようと思い至ったからではなかったか。
チームには本田や岡崎、森重ら北京五輪世代がいて、その下の世代には吉田麻也、ロンドン五輪世代には清武弘嗣、山口蛍たちがいる。ブラジルW杯で結果が出ず、先のアジアカップでもベスト8で終わった。一人ひとりが危機感を募らせ、一人ひとりがチームを思う割合を増やしているのが過渡期である今なのかもしれない。
キャプテンシーのありかたは、千差万別。
森重のキャプテンマークが意味するもの。
キャプテンシーは千差万別。たとえキャプテンマークを巻いてなくとも、それは発揮できるというもの。競争はありながらも、一人ひとりがそれぞれの形、やり方でチームを引っ張ろうとする組織にしたい。
ハリルホジッチはそんな願いを込めて、彼に最後、キャプテンマークを委ねたのではないだろうか。メンバーひとりひとりへのメッセージであるかのように――。