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林彰洋がノイアーより走る3つの理由。
守備ラインの低い鳥栖でなぜ5km超? 

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松本宣昭

松本宣昭Yoshiaki Matsumoto

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posted2015/03/23 11:10

林彰洋がノイアーより走る3つの理由。守備ラインの低い鳥栖でなぜ5km超?<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

ハリルホジッチ日本代表監督の初招集にも、バックアップメンバーながら名前を連ねた林彰洋。鳥栖の堅守速攻を豊田陽平とともに支える陰のキーマンである。

最も印象的だったのは、林の「準備能力」。

「今日は風に負けてキックミスが多かった」

 林が語るように、この日は強風と短い芝の影響を受けて、FKがそのままタッチラインを割ったり、相手GKまで伸びてしまうミスも散見されました。しかし、林は徐々にそれを修正し、61分には自陣ペナルティーエリア内のFKから池田が決定機を迎えました。このロングキックの精度はノイアーとの共通点でもあり、FKの位置まで走ることで、走行距離が伸びる要因となっているのでしょう。

 味方とコミュニケーションを取るためにハーフウェーライン付近まで駆け寄り、FKのキッカーとしてあらゆる地点に顔を出す。これがノイアーを凌ぐ走行距離を稼ぎ出していることは間違いないのですが、横浜FM戦で最も印象に残ったのは、林の「準備能力」の高さです。

 試合中、彼は相手にボールが渡った瞬間に、まるでゴール前でシュートを打たれるかのように、ぐっと前傾姿勢となり、細かなステップを踏みます。たとえ敵陣深くにボールがあっても、常にポジションを修正し、いつロングシュートが飛んできても、スルーパスが通されても対応できる体勢を整えている。これは、走行距離にすればわずかな違いでしょうが、「ゴールを守る」ことが最大任務のGKにとっては、最も重要な要素です。

準備をしても、失点を避けられない厳しいポジション。

 プロのGKなら誰でもやっているだろうと思われるかもしれませんが、意外とできていない選手が多いんです。林の準備能力の高さは、77分のプレーが証明しています。自陣右サイドから蹴られたクロスに対して、タイミングとコースを読み切り、ペナルティースポット付近まで飛び出して、がっちりキャッチ。クロスが蹴られる瞬間には、前方へステップを踏み出していました。

 常に失点のリスクを減らすために、ハーフウェーラインまで走って味方に声をかけ、おそらく飛んでこない位置からのシュートにも備える。ただし、それだけの準備をしながら、失点をしてしまうのもGKという職業の難しさです。81分、小林祐三のクロスから下平匠がシュート。鳥栖のDFがブロックしたこぼれ球を兵藤慎剛が押し込む。これが決勝点となって、横浜FMが1-0で勝利しました。

【次ページ】 「あのシュートを止められなかったのは、僕の責任」

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