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ザックの“インテンシティ”って何?
反町康治と曹貴裁が看破する。
posted2015/03/23 10:05
text by
粕川哲男Tetsuo Kasukawa
photograph by
Tadashi Shirasawa
「マインツの試合、観に行ったでしょ」
席に着くや否や先輩が発した一言で、対談は流れるように始まった。反町康治と曹貴裁。2009年から3年間、湘南ベルマーレの監督、ヘッドコーチとして共に戦った2人は堅い絆で結ばれている。対談の司会を務めるこちらが、話を振るまでもない。
現在は松本山雅FC、湘南の監督としてぞれぞれJ1での戦いに挑んでいるが、持ち味はともに“インテンシティの高いサッカー”だ。Number35周年記念号の取材で話を聞いた際、そんな両者の言葉が特に熱を帯びたのは、ブラジルW杯での日本代表の戦い方について。アルベルト・ザッケローニ監督が掲げたインテンシティの高いサッカーとは何だったのか、という話題になったときだ。
「何をもってインテンシティが高いと言っていたのか」
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反町 「ザッケローニさんは『インテンシティの高いサッカーを目指す』と言っていたけど、そのような戦いをしているようには見えなかった。そこが悲しいよね。インテンシティの捉え方は人それぞれで、アグレッシブにディフェンスするという意味で使ったりするけど、どのように捉えていたのか、そこは知りたかった」
曹 「2列目の選手がスイッチを入れたとき、ボランチが連動してセンターサークルの前でバチンとボールを奪うプレーはほとんどなかった。行って外されるよりは、下がって守る。極端に言うと、守備で楽をしていた。下がって、相手がミスをするのを待って、ボールを奪ったらパスを回して休む。それがいまの日本のサッカー。悪いとは思わないけど……」
反町 「それなのにインテンシティが高いサッカーをしていると言われることは、癪に障る。どういう意味で使っているの? って。試合中の走行距離でもスプリント回数でも相手を上回ってないのに。何をもってインテンシティが高いサッカーと言っていたのか。そこがクエスチョンマークなんだけど、答えを聞くことはできなかった」
アジアや世界で結果を残すことができない日本代表の現状を憂いながら、松本、湘南というスモールクラブを指揮してJ1に挑んでいる両監督は、現代サッカーにおける重要なキーワードであるインテンシティを、明確に定義している。