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4月からFIFAの公認代理人が廃止に。
選手の移籍に「自己責任時代」到来?
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byGetty Images
posted2015/03/15 10:35
FIFAのブラッター会長が認定制度廃止に舵を切ったが、国ごとの資格制度は各国協会に任されている。FIFAが各国協会に責任を押し付けた恰好だ。
日本代表クラスの選手とて、例外ではない。
だが、無資格代理人の甘いささやきが、現実になることはなかった。
Aはそこから移籍先が見つからず、結局そのまま引退。収入が途絶えたばかりか、サッカー人生が終わってしまったのだ。
Bは現地で粘ってタイの他チームへの入団を取り付けたが、そこから思いもよらぬ出来事が起きた。未資格代理人の手によって、自分がまったく知らないクラブに勝手にアマチュア登録されていたのだ。結局、他の代理人の尽力によって入団を取り付けたが、一歩間違えれば宙ぶらりんの状態になるところだった。
日本代表クラスの選手も、例外ではない。
アフリカでプレーした経験を持つ日本人の元選手が、資格がないにもかかわらず代理人業務を開始。ジュビロ磐田に所属していた日本代表選手に接触し、ヨーロッパに移籍させようとしたことがあった。クラブは大混乱に陥った。
「たとえば芸能事務所が仲介者になったら……」
なぜ未資格代理人は、問題を起こしやすいのか?
一番の理由は、業界のルールを無視しても罰則がなかったからだろう。有資格者ならば、ライセンスの剥奪があり得るため、それがブレーキになる。一方、未資格者は失うものがないため、ルールを破ることへの抵抗感が異なる。
大久保嘉人や稲本潤一の代理人を務める田邊伸明は言う。
「僕ら有資格者は何か起こしてしまえば、罰せられる期間がありました。今後は『問題があったら仲介人を辞めればいいや』といういい加減な人が増える恐れがあります」
これからも日本サッカー協会に登録する仲介人のほとんどは、高い志を持った人間だろう。だが、なかには利益優先のトラブルメーカーが現れる可能性もゼロではないはずだ。知識がないために問題を起こす“アマチュア仲介人”の増加も危惧される。
遠藤保仁や宇佐美貴史が所属する日本最大のエージェント事務所『ジャパン・スポーツ・プロモーション』の西真田佳典(日本サッカーエージェント協会会長)はこう指摘する。
「たとえば芸能事務所が仲介者になったら、選手をテレビに出してナンボと考えるかもしれない。練習や試合の日程を考えず、本来は体を休めるべきときにテレビに出すこともあるでしょう。商品として食い物にされる可能性があります」