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石川遼は試合に出場しすぎなのか?
年間最大41試合に出ることの弊害。 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byAFLO

posted2015/03/12 10:30

石川遼は試合に出場しすぎなのか?年間最大41試合に出ることの弊害。<Number Web> photograph by AFLO

今年はなかなかポイントを獲得できずにいる石川遼。春からはマキロイらも本格的に始動し、さらに厳しい戦いが待っている。

連戦には、肉体的な疲労以上に、精神的な問題がある。

 ちなみに石川が年間もっとも多くプレーしたのは2012年。日本を主戦場とし、腰痛を抱えたまま米ツアーのシード権取りに奔走し41試合(団体戦等含む)に出た。1年は52週だから、およそ5分の4はトーナメントウィークを過ごしたわけだ。

 プロゴルファーにとって、観客の前に姿を多く見せることは揺るぎない価値だ。とはいえ、この連戦をいとわないスタイルが、必ずしも高く評価されるわけではない。試合を休むのが必要なこともある。なにせ最近の石川本人が、欠場することで得られる効果を実感しつつあるようなのである。

 それは肉体的な蓄積疲労への対策といった以上に、精神的な問題を解消する意味がある。

 1月下旬の今年初戦から3連戦を戦った後、1週間の休養をとって迎えた2月のノーザントラストオープン。

 休養した週はサンディエゴ近郊カールスバッドの拠点で集中的にショット練習に時間を割いてきたのだが、試合前の引き締まった表情が印象的だった。

「やっぱり、いいっすよね。試合に向けて練習をするというか、休みの週に(次の)試合で戦えるように練習をやっておく。試合は試合、練習は練習。今週は“打ち方”にこだわらず、いかに集中して試合を戦えるかというところ。気持ちの入れ替えという意味で違う。いい調整ができた。明日から試合なので、練習、練習というよりは試合に集中できるようにしたい。『今週はこの状態でやる』という自信を持ってやる」

試合中に、意識がコースではなくスイングに向く瞬間が。

 試合に向けて練習をする――。

 当たり前にも思えるが、「試合」と「練習」に向き合う心の境界線が、もうひとつ曖昧なところが、石川が長年抱えるウィークポイントでもある。

 ラウンド中、「どこにボールを運ぼうか」とゲームに集中していても、ふとした瞬間に、練習中に追い求めていた理想的な動き、スイングのイメージがひょっこり顔を出す。いつの間にか意識が目の前のコースよりも自分自身の体に向けられ、突如としてスコアメークに苦しんでしまう……。そんな連鎖が何度もある。

 この大会はパー4の8ホールでロストボールから8打を叩いた初日が響き、結局予選落ちしたが、石川は「先週まではディフェンシブだったが、今週はそんなことはなかった」と心境の変化を感じ取っていた。積み上げた練習量もさることながら、1週間の十分な調整が、充実した精神状態と無縁だったわけではないだろう。

【次ページ】 出場しても、予選落ちしてしまえばポイントは得られない。

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