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新球スプリットに挑む、大瀬良大地。
広島の次世代エースが戻る原点とは? 

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2015/02/19 10:45

新球スプリットに挑む、大瀬良大地。広島の次世代エースが戻る原点とは?<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

自主トレを前田健太と共に過ごした大瀬良。黒田博樹、前田という偉大な先輩と共にタイトル争いを演じられるか?

紅白戦で試したスプリットはわずか4球のみ。

 その反面、気がかりもあった。

「スプリット習得」という最大目標を掲げる割には、ブルペンで投げるスプリットの球数がそれほど多くはなかったのだ。

 今季、初めての実戦登板となる2月14日の紅白戦を前に、大瀬良は「しっかりバッターを抑えるつもりでスプリットを投げていきたい」とテーマを述べていた。

 紅白戦では2回を無安打1四球、無失点。緒方孝市監督から、「ゲーム中にしっかり修正できていたね。成長している」と及第点を与えられる投球内容ではあった。

 だが、肝心のスプリットは、全22球中わずか4球のみだった。

 初回の2死から3番・丸佳浩への初球、続く4番・エルドレッドへのカウント1ストライクからの2球目と見逃し三振に打ち取った4球目。そして、2回の先頭・松山竜平への初球。このうち、明確な成果へと繋がったのはエルドレッドの三振だけだったが、真ん中付近に浮くような明らかな失投もなかった。

最優先の課題は新球よりもストレートの精度。

「よかったですか、スプリット。本当ですか?」

 報道陣から新球の仕上がりのよさを聞かれた大瀬良は、やや懐疑的な表情を浮かべていたものの、だからといって不満そうな素振りも見せずスプリットを自己評価していた。

「エルドレッドを見逃し三振にしたボールはいいところに決まってくれたんでよかったですけどね。今日は(指に)引っ掛けてワンバウンドするボールはありませんでしたけど、全体的に抜けていたしスライド気味に変化していたんで、もう少しストライクゾーンからボールになるようなスプリットを投げられるようになれば使えるんじゃないかな、と」

 感触は悪くはないようだ。だとしても、大瀬良にはスプリットに固執している様子が見られない。

「今日は真っ直ぐばかり投げました」

 この言葉が、全てを物語っていた。

 周囲はつい、目新しい変化に注意を向けてしまいがちである。だがやはり、大瀬良の最大のセールスポイントは150キロを越える力強いストレートにあるのだ。

 大瀬良ははっきりとこう口にした。

「スプリットよりも真っ直ぐのほうが自分の求めている球種なので。それをしっかり投げられるようにしていきたいというか。今日はほぼ真っ直ぐでしたけど、バットの芯で捉えられなかったですし、低めにも決められたのでボール自体はよかったと思います」

【次ページ】 スプリットと真っ直ぐの「いい関係」を築く。

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