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清武、今野投入の采配が空気を一変。
アギーレジャパンは“雑音”に動じず。 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2015/01/17 10:50

清武、今野投入の采配が空気を一変。アギーレジャパンは“雑音”に動じず。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

前半チームの攻撃を牽引した乾貴士に代わってピッチに立った清武弘嗣。乾とはまた異なる持ち味を発揮して攻守に活躍した。アギーレジャパンは、また1つ戦略の引出を手に入れたと言える。

背番号10の躍動が、チームを先導していた。

 ハビエル・アギーレ監督は試合後の会見でこう語っている。

「(相手の)ボランチをケアしなければいけないので遠藤(保仁)と(香川)真司に付くようにと指示したが、彼らがうまく対応してくれた。そしてボールを持ったときにも良いプレーを見せてくれて満足している」

 遠藤もさることながら、この日光ったのは香川だった。

 守備の意識を高く持って相手のボランチを食い止めるとともに、攻撃となれば積極的に前線へ飛び出していった。前半11分、右サイドの本田圭佑からのパスに合わせて走り込み、チーム初シュートを放ってもいる。そして先制点となるPKを呼び込んだ前半22分のシュートも、前へ向かう意識がもたらしたもの。守備やチャンスメークの質も、そしてパレスチナ戦ではあまり見られなかったフィニッシュに絡む意識も相当に高かった。

 香川は本田がPKを決めた後も、守備を緩めなかった。25分には相手のカウンターを食らったところで、ボランチに出たボールを下がってきてカットしている。背番号10の躍動が、チームの躍動を先導していた。

悪化しかけたリズムを、清武と今野が引き戻す。

 だが、後半に入ると日本に嫌な空気が漂い始める。ボールを奪えず、ズルズルと下がって自陣に運ばれてしまう時間帯が続いた。中盤の攻防が一進一退となるなかで、アギーレの打った手が清武弘嗣、今野泰幸のダブル投入だった。清武が乾に代わって左ウイングに、今野が遠藤に代わって右インサイドハーフに入った。

「ボールを落ち着かせてくれ」

 指揮官からそう言って送り出された2人が、イラクに傾きそうな流れを着実に引き戻して見せる。

 昨年11月のオーストラリア戦でボール奪取を繰り返した今野が、今回も守備に厚みをもたらした。そして香川に負けじと輝きを放ったのが清武だった。

 投入された直後の65分。味方のフィードを岡崎が胸トラップでそらし、ボールは香川から清武につながる。ファーサイドがフリーになることの多いイラクの守備を頭に入れていたであろう清武は、そこに走り込んできた本田に決定的なパスを送った。本田のシュートはポストを叩いたものの、停滞しつつあった攻撃がこのプレーで息を吹き返した。

「自分がボールを触ることによってリズムができるんで、そこは凄く良かったなと思う。(初戦と比べて)硬さも取れたし、距離を近づけながらやれた。真司くん、圭佑くんとの距離を確かめつつ、ボールをもらうことができていました」

 清武のリズムがチームのリズムになっていた。

【次ページ】 アギーレジャパンでの戸惑いはもう消えた。

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