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ホンダだけがシーズン中の開発不可!?
規則の抜け道から始まった場外乱戦。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byAFLO
posted2015/01/18 11:00
19戦16勝と、まさしく2014年を席巻したメルセデス。2015年の進化のほどは、2月1日から始まるテストで明らかになる。
とはいえ無制限に開発が可能なわけではないが……。
2014年の2月28日にホモロゲーションされたメルセデス、ルノー、フェラーリのエンジンは、2015年に向けて42項目ある部品のうち、39項目について開発することが許されている(禁止されている3項目はクランクケース、クランクシャフト、エアバルブ)。
ただし、残りの39項目をすべて変更できるわけではない。39項目にはそれぞれ1~3のポイントが与えられており(関係者はこれをトークンと呼んでいる)、2015年に向けて使用可能なのは32ポイントとなっているからだ。39項目すべてを変更しようとすると、61ポイントとなるため、全体の約48%までしか変更できないのである。
さらに、2016年へ向けての開発で使えるポイントは25に減り、以後20、15と減り続け、最後の2年間は3ポイントずつと、事実上開発できないシステムとなっている。
このポイントを使った開発の期限が、2月28日だと思われていたのだが、今回の一件で、ホモロゲーションの期限は自由に設定できることになった。
ただし、だからといってメルセデス、ルノー、フェラーリの3メーカーが、シーズン中に何度も開発できるわけではない。
ホモロゲーションの期日は確かに抜けていたが、いずれにせよFIAの認証を取っていないパワーユニットをグランプリで使用することはできない。
つまり、2015年のパワーユニットのホモロゲーションを遅らせるということは、それまでの間、1年前の2月28日にホモロゲーションを取った2014年型パワーユニットで戦わなければならないということである。さらに言えば、メーカーが抜け道を使うということは、自分たちの課題を2014年中に解決することができなかったことも意味している。
期限ではなく、問題はメルセデスを越えられるか。
ホンダとマクラーレンは現在、FIAに対して「既存の3メーカーだけにホモロゲーションの期限を設定しないという判断は不公平である」と異議を唱えている。
もちろん、水面下での政治的な駆け引きは必要である。しかし、ホンダが戦うべき相手は、ホモロゲーションの期限を気にするようなメーカーではなく、2014年にグランプリを席巻したメルセデスのエンジン「PU106A Hybrid」である。それを上回るパワーユニットを2月28日の時点でホンダが開発できなければ、メルセデスが32ポイントを使用してさらに開発してくる2015年型パワーユニットに勝てないのは、自明の理だ。
ライバル勢が仕掛けてくる心理戦に惑わされることなく、ホンダはただ一点を見つめて、開発に集中してほしい。その一点とは、頂点を目指した戦い。ホモロゲーションの期限を巡る争いではない。
※1月19日追記:その後、FIAはホンダにも他の3社同様に開発を認めるルール変更をしました。