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錦織圭、歴代のラケットを徹底検証!
小学生時代から15歳まで一気紹介。 

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河崎三行

河崎三行Sangyo Kawasaki

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photograph byAction Images/AFLO(L),Tennis Classic Break(R)

posted2015/01/19 10:40

錦織圭、歴代のラケットを徹底検証!小学生時代から15歳まで一気紹介。<Number Web> photograph by Action Images/AFLO(L),Tennis Classic Break(R)

ブリスベン国際での25歳の錦織と、ウイルソンと初めて契約した11歳の時の錦織。

フェイス面積を変え、次のレベルにステップアップ。

 実は、錦織は初めて道場氏に会う前から、すでに使用ラケットを「HYPER HUMMER 6.3」に替えていた。そしてその選択が結果として非常に適切であったため、ウイルソンは同じものを支給することにしたのだという。

「ウイルソンでは、競技レベルの選手にとってベストなフェイス面積は95平方インチだという考えを持っています。フェイスの大きなラケットの方がスイートスポットは広く、ボールもよく飛びますが、空気抵抗が大きくなります。フェイスを小さくするとスイートスポットは若干狭くなるものの、空気抵抗が減る分、スイングスピードが速くなり、強く、安定したボールが打てるんです。圭君は前年まで使っていた『5.3』の110平方インチモデルから、フレームがより柔らかい『6.3』の95平方インチモデルへとスイッチしていたのですが、これは大正解でした。

 同じスペックのフレームのままフェイス面積だけを小さくすると、どうしてもフレームがしならなくなるんですよ。いくら彼は硬いラケットが好みとはいえ、『5.3』のままだと11歳の少年の体には負担がかかりすぎる恐れがありました。だからフェイス面積を95平方インチにすると同時に、よりしなるフレームへ変更したというのは、無理なく次のステップに進む上で賢明な選択だったのです。だから我々も、そのまま『6.3』を継続使用させることにしました」(道場氏)

●HYPER HAMMER(ハイパー・ハンマー)5.2

 95平方インチのフェイス面積にも慣れて、うまくボールを捉えられるようになり、徐々に体力もついてきたので、再び硬く、パワーのあるフレーム(HYPER HUMMER5.2)へと戻した。

「このモデル以降、圭君のラケットには彼へのプレゼントの意味で、筆記体の『Kei』というロゴをシャフト側面にプリントするようになりました。今ではこのロゴが入っていないと自分のラケットじゃない、というぐらい彼も愛着を持ってくれています」(道場氏)

 これも、異例中の異例のこと。ウイルソンが契約選手用ラケットに個人名のロゴを入れて支給しているのは、現在でもフェデラーと錦織の2名だけである。ましてや当時の錦織は、世界的にはまったく無名のジュニア選手に過ぎなかった。

「Keiのロゴについてはアメリカ本社の許可を得た上で、中国の工場での製造段階で特別にプリントしていました。当時、私が本社とどんな交渉をしたのか、今となっては細かい内容まで覚えていませんが、あの手この手を駆使して実現させた記憶があります。もちろん、他の国の現地法人では絶対に許されないはずです。日本支社内部でさえ、『中学生になったばかりのアマチュアになんでそこまでするの?』と言われていましたから。その理由は……やっぱり人間性ですよね。彼は子供の頃から、自分が今、何をしなければいけないかがよくわかっている選手でした。大人なんですよ。

 そしていざ試合となると、相手をぶっ潰してやるというぐらいの気迫がひしひしと伝わってきて、年上の私でも怖さを感じたものです。とてもじゃないけど、気安く『圭!』なんて声援を飛ばせない雰囲気をまとっていました。それでいてオフコートで浮かべる笑顔はまだまだあどけなくて、あれを見せられたら『絶対に応援してやろう』と思わずにはいられなくなるんです(笑)」(道場氏)

【次ページ】 日本人選手初の特別対応で作られたラケット。

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